2014/2/27 新設計労務単価-全都道府県が適用/入札不調頻発の危機感が後押し/本社調査

【建設工業新聞 2月 27日 1面記事掲載】

国が公共工事の積算に用いる設計労務単価を引き上げ、2月から新単価を前倒し適用したのを受け、都道府県にも国に準じた単価改定や、既発注案件にも新単価を反映させる特例措置導入の動きが広がっている。日刊建設工業新聞社の調べによると、全都道府県が今月中旬までに新単価に移行。既発注案件への特例措置も、検討中の3県(福井、兵庫、奈良)を除く都道府県が適用していることが分かった。

国は、建設工事の労務費が高騰していることを踏まえ、毎年4月に行っている設計労務単価の改定を2カ月前倒しし、2月から新単価を適用した。過去最大の上げ幅となった昨年4月の改定に続く大幅引き上げで、対象50職種の全国単純平均で7・1%上昇。東日本大震災の被災3県(岩手、宮城、福島)では8・4%の上昇となった。国土交通省は直轄工事だけでなく、地方自治体に対しても新単価の早期適用を要請している。日刊建設工業新聞社が25日までに各都道府県の担当部署に新単価や特例措置への対応状況を取材したところ、40府県が国と足並みをそろえて2月1日から新単価を適用。他の7都道県も14日までに新単価に順次移行したことが分かった。

国は、2月以前に入札が済み、新単価の適用日以降に契約する工事を対象に、いったん旧単価で契約を結んだ後、新単価で契約変更する特例措置を導入している。都道府県もほとんどが国に準じてこの特例措置を講じ、受注者からの請求に基づいて請負代金の変更協議を実施する。静岡県は2月1日から3月31日までの契約案件について、新単価での契約変更を行うとしている。新潟県は契約変更を求める受注者が作成する請求書のひな型をホームページに掲載し、手続きの円滑化に努めている。

既に契約済みの工事に対しては、賃金などの急激な変動に応じて請負代金を変更できる請負契約書の「インフレスライド条項」を適用して新単価を反映させる動きも広がってきた。同条項の運用基準やマニュアルが未整備だった自治体も、準備が整い次第、運用を順次開始している。回答時点でインフレスライド条項の適用を「検討中」だったのは福井、岐阜、京都、兵庫、奈良の5府県。大阪府は「未定」と回答。埼玉県は国に準じて同条項の適用に対応するとしているが、予算との兼ね合いもあり、庁内の各発注部署に判断を任せているという。

今回の単価改定や特例措置に対する都道府県の動きについて、国交省は「頻発する入札不調・不落問題に対する危機感が自治体側の対応を早めているのではないか」とみている。これまで下落傾向にあった労務費が、建設需要の急増を背景に上昇に転じたことを受け、自治体も単価引き上げによる技能者の処遇改善と建設業界の人材確保に本腰を入れだした形だ。一部の自治体では、14年度予算案に建設業への入職促進や人材育成を支援する新規事業の関連経費も計上している。

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