2014/7/2 国交省/インフラ維持管理業務の収益性調査結果/受発注者の認識にギャップ

【建設工業新聞 7月 2日 1面記事掲載】

今後ニーズの急拡大が見込まれるインフラの維持・修繕業務で、採算に対する受発注者間の溝が埋まらない。国土交通省が1日公表した調査結果によると、建設会社など企業の6割以上が市町村発注業務の「収益性は低い」と考えていることが明らかになった。発注者の積算と実際の費用に開きがあるのが最大の理由。一方で自治体の7割は「乖離(かいり)していない」としており、自治体と受注者側で認識のギャップが生じていることが浮き彫りになっている。

調査は全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設コンサルタンツ協会を通じて14年2月に実施。建設会社521社、建設コンサルタント150社が回答した。結果は13年度国土交通白書に盛り込んだ。国交省は調査結果を受けて、将来にわたって維持管理の担い手を確保するため、一定の収益性を確保できる環境の整備が必要だと強調している。

調査結果によると、回答企業の62%が、市町村が発注する維持管理・修繕業務の収益性が「低い」と回答し、「標準的」は36%、「高い」と答えたのは0・6%だった。国や都道府県の業務についても4割強の企業が「収益性は低い」と答えた。自治体が発注する業務の収益性が低い理由を聞いたところ、最も多かったのは「実際の手間やコストに比べ、積算上の単価・歩掛かりが低い」だった。白書には自治体を対象に実施した別のアンケート結果も掲載。維持修繕工事で予定価格と実際の経費がかけ離れている理由を聞いたところ、74%の自治体が「乖離(かいり)しているという認識はない」と答えている。

維持管理分野では既に技能者や職長の確保が難しくなっている状況だが、維持・修繕が必要なインフラは今後、右肩上がりで増える見通し。収益性の改善が進まなければ、企業が受注を敬遠したり人材の確保が難しくなったりしてインフラの健全性の維持に支障が生じかねない。こうした問題意識から、先の通常国会で成立した改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)では、受注者の適正利潤確保を「発注者の責務」と規定。改正法の趣旨を実際の発注現場で実行に移すためため、白書でも発注規模や工期の工夫、積算単価の見直しの必要性を指摘している。

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