2014/10/31 国交省/現場の安全対策、負担区分の明確化推奨/法令順守ガイドライン改正

【建設工業新聞 10月 31日 1面記事掲載】

国土交通省は30日、建設業の法令順守ガイドラインを改正した。建設工事の安全対策強化が目的で、下請契約に当たって、見積もり条件を提示する段階から、各種の安全対策を元・下請業者のどちらが実施し、経費をどちらが負担するかを一覧形式で明確化。契約書の内訳書にも明示し、対策経費の透明性を確保するよう推奨している。

国交省は、改正ガイドラインを同日付で業界103団体に土地・建設産業局建設業課長名で通知した。11月の「建設業適正取引推進月間」に全国で開く講習会でも詳細を説明する。

改正ガイドラインでは、元請業者が下請業者に見積もり条件を提示する段階で安全対策の実施者と経費負担者の区分を明確化することによって、下請が当事者意識を持って自ら実施する対策を把握し、経費を適正に見積もるよう促す。元請に対しては、下請が提出する見積もりを尊重し、建設業法の規定に沿って対等な立場で契約交渉を行うよう促す。契約書でも、施工条件として安全対策の実施者と経費負担者の区分を示し、下請が負担する対策経費を内訳書で明示できるようにする。これによって、元請が下請に請負代金を支払う際、下請の負担であることが明示されていないにもかかわらず一方的に費用を差し引くような問題が起きるのを未然に防ぐ。

建設現場では例えば、直接工事費として計上する足場の経費を元請が負担する場合でも、天井など内装の部分的な工事の足場の経費をどちらが負担するか不明確な場合がある。現場でかぶるヘルメットは自社で負担するのが一般的だが、元請の方針で統一したものを着用するようなケースでは、見積書や契約書に負担者を明示しておかないと後でトラブルに発展することもある。国交省は、ガイドラインの改正に合わせ、見積もり条件や契約書で安全対策の実施者と経費負担者を区分するための一覧表の様式をホームページに掲載。これに記入すれば、実施者と経費負担者が元請か下請かを一目で分かるようにしてあり、現場での活用を促す。

建設現場の労働災害は、1979年から2010年まで減少を続けてきたが、11年から3年連続で増加。14年上半期(1~6月)の建設業の労災死亡者は前年同期比28・2%増の159人となった。厚生労働省は、業界団体に労災防止の取り組み強化を要請しており、国交省もガイドライン改正を通じて対策の徹底を促すことにした。震災復興や2020年東京五輪開催で建設需要が拡大するのに伴い、増加が懸念される労働災害の予防につなげる。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る