2015/10/14 建設需要、19年がピーク/量から質へ転換、人材育成・生産性向上に力/本社調査

【建設工業新聞 10月 14日 1面記事掲載】

2019年をピークに建設市場は縮小し、量から質へと需要転換が本格化-。ゼネコンや建築設計事務所、建設コンサルタントなど建設関連企業の経営者が長期的な事業動向をそう見ていることが、日刊建設工業新聞社が各社のトップに行ったアンケートで明らかになった。今ある需要を取り込みつつ、今後成長が期待できる分野・領域をどうつかんでいくか。多くの経営トップが市場変動や環境変化を捉え、人材の確保・育成や生産性の向上、海外事業の拡大に力を注ごうとしている。

9月に建設関連100社の社長を対象に、建設市場の長期的動向や市場変動への対応策などについてアンケートを実施。81社の経営者から有効回答を得た。

2015年の建設市場を基準に長期的(16~25年の10年間)な市場動向を予測してもらった結果、19年までは「増加」または「やや増加」とする回答が多かった。だが、20年を境に「同水準」も含めたこれら回答の割合は減少。20年以降は、「財政健全化に向け公共投資が抑制される」「市場環境の低迷は避けられない」など厳しい市場環境を危惧する声が目立った。長期的には、市場の縮小傾向が続くとの見方が支配的だ。

一方で、建設市場は大きく変動せず、底堅く推移するとの予測もある。「景気変動に伴い微増減はあるものの、基本的には15年と同じ水準で推移する」(白石達大林組社長)などの意見が寄せられた。

五輪特需のような増加は期待できないが、「都市の再開発やインフラ老朽対策、リニア中央新幹線など一定の社会資本整備が見込まれる」(宮本洋一清水建設社長)、「リニューアル市場の伸びが見込まれる一方、維持更新では対応しきれないストックの建て替えや再開発の需要も想定される」(宮下正裕竹中工務店社長)と見ている経営者も少なくない。

社会資本ストックをどう維持・更新していくか。こうした需要の質的転換に伴う市場ニーズが続くと予測する経営トップは多い。

市場変動や環境変化にどう対応していくかは重要な経営課題の一つだ。アンケートでは、こうした変化への対応策として「現場生産性の向上」や「海外事業の拡大」など10項目を挙げ、特に重要だと思う対応策を5項目まで選択してもらった。その結果、多かったのは「人材の確保・育成」(71人)、「現場生産性の向上」(62人)、「海外事業の拡大」(51人)となった。

長期的視野で成長が期待できる事業分野・領域には、「維持・更新」「防災・減災」「エネルギー・環境」などを挙げるトップが多い。このほかにも「CM、PPP、PFIなど従来型請負以外の事業分野の拡大。海外ではアジアの新市場の開拓による受注増を見込む」(押味至一鹿島社長)などの分野・領域が挙がった。新規分野としては、エネルギーや環境、医療、PPP・PFIなどが目立った。

今後、縮小していくと見る分野・領域は、「既存分野の新設・新築」という回答でほぼ一致した。「特定の分野・領域が縮小するというよりも、人口減に伴う需要減少や公共部門の財政的制約などの中で、市場全体が引き締まると予想する」(村田誉之大成建設社長)と今後を見据える声もあった。

アンケート回答企業は次の通り(業種別、五十音順)。
【ゼネコン】青木あすなろ建設△淺沼組△安藤ハザマ△大林組△奥村組△鹿島△熊谷組△鴻池組△五洋建設△佐藤工業△清水建設△大成建設△大豊建設△竹中工務店△竹中土木△鉄建△東亜建設工業△東急建設△東鉄工業△東洋建設△戸田建設△飛島建設△西松建設△日本国土開発△長谷工コーポレーション△ピーエス三菱△フジタ△前田建設△三井住友建設
【デベロッパー】大京△野村不動産△三菱地所△森トラスト
【建築設計】梓設計△石本建築事務所△久米設計△佐藤総合計画△日建設計△日本設計△三菱地所設計△安井建築設計事務所△山下設計
【建設コンサルタント】ACKグループ△エイト日本技術開発△応用地質△オオバ△建設技術研究所△長大△日本工営△パシフィックコンサルタンツ△八千代エンジニヤリング
【建築設備】協和エクシオ△きんでん△弘電社△コムシスホールディングス△三機工業△三建設備工業△ジョンソンコントロールズ△新日本空調△住友電設△大気社△大成温調△ダイダン△高砂熱学工業△東光電気工事△東洋熱工業△トーエネック△日比谷総合設備△富士古河E&C△ミライト・ホールディングス
【道路舗装】大林道路△鹿島道路△世紀東急工業△東亜道路工業△NIPPO△日本道路△前田道路
【資機材メーカー】三和ホールディングス△住友大阪セメント△太平洋セメント△YKKAP。
調査結果は15日発行の提言特集号「2020年→20XX年 社会資本整備と建設産業の変化を捉える」で詳報します。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る