2015/10/20 国交省/「くじ引き」落札是正へ/最低制限価格事前公表取りやめ要請へ

【建設工業新聞 10月 20日 1面記事掲載】

◇発生率は事後公表の5倍
国土交通省は、地方公共団体の発注工事で散見される「くじ引き」による落札者決定の是正指導に乗りだす。低入札価格調査基準価格や最低制限価格(ロアリミット)を事前公表している地方公共団体工事でくじ引き発生率は高い。入札参加業者は公表された調査基準価格やロアリミットで応札するため、適正な積算を行わず、技術力や経営力による競争が損なわれていることから、地方公共団体などの発注者に対し事前公表の取りやめを求める。都道府県の担当者を集めて11月に各地で開く本年度下期のブロック監理課長等会議の議題とする。

国交省が総務省、財務省と共同で行った入札契約に関する実態調査(13年度実績)を集計したところ、ロアリミットを導入している市区町村907団体のうち、同価格を事後公表している457団体のくじ引き発生率は4・9%。これに対して、事前公表の130団体では25・5%となり、事後公表団体の約5倍となっていることが判明した。

都道府県、政令市でも、低入基準価格やロアリミットを事前公表している団体のくじ引き発生率は、事後公表団体に比べて2~3倍高い。

低入基準価格やロアリミットについては、それらを事前に探ろうとする不正な動きから職員を守る目的で、入札前に事前公表する地方公共団体が少なくない。ただ、事前公表によって、これら価格に誘導されて応札する業者が後を絶たず、結果として、くじ引きで落札者を決めざるを得なくなっている。受注額もロアリミットなどと同額となり、事実上発注者の「指し値」での受注となる。

全国建設業協会(全建)が各地で行っている地域懇談会・ブロック会議に備えて実施した調査でも、「ほぼ全ての入札が抽選。施工能力や技術力ではなく、工事を『運』で受注しているのが実情である」という指摘が複数の地区の会員企業から出ており、全建は価格の事前公表の是正を強く求める構えを見せている。

適正な積算など企業努力を損なわせることにもなるこれら価格の事前公表については、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づく運用指針でも、「入札前には公表しないものとする」と明記されている。

下期ブロック監理課長等会議では、くじ引きが高い確率で発生するなど、事前公表によって適正な入札契約の執行に弊害が生じている実態を示して、議論の俎上に載せる予定。運用指針の記載事項を根拠にして、「事前公表を取りやめ、公平な競争環境を構築するように呼び掛けていきたい」(建設業課入札制度企画指導室)としている。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る