2015/11/12 全建ブロック会議を振り返る・下/地域の活動、挫折させない

【建設工業新聞 11月 12日 1面記事掲載】

◇事業量、品確法両輪に道開く
「(10月19日に)石井啓一国土交通相に要請した『事業量の安定的かつ持続的な確保』と、改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の『運用指針の徹底』に集約されている。具体的な項目を議論できた」。全国建設業協会(全建)の近藤晴貞会長は、15年度のブロック会議をそう総括する。

各地では、当初予算での公共事業の増額、補正予算の早期編成と、自治体への運用指針の徹底、適正利潤の確保、発注・竣工の平準化といった項目で、事業量や公共工事品確法の議論が行われた。「盛り上がる活動を挫折させるわけにはいかない」。近藤会長は、会合に臨むごとにそうした思いを強くしたと振り返る。

各協会には、公共投資の抑制に合わせて経営規模を縮小させた会員企業もある。工事量の地域格差が拡大する中、減少地域では賃金を減らす企業も少なくない。当初予算の大幅増は現実的には難しく、各地の会場を訪れた脇雅史・前自民党参院幹事長は「増やすなら補正しかない」と強調した。ただ補正予算の規模は毎年変動し、補正頼みの経営では担い手の確保や継続的な設備投資はままならない。

「本業だけでは食えない。資材の製造販売や、不動産関連で足りない収益を補っている」「みんな厳しくて合併もできない。後継者がおらず廃業しか道がない会社もある」。地域のインフラの整備・維持管理や災害対応を担う地域建設会社が必要数を割り込むことを心配する声は強まっており、政策の再検討を期待する協会首脳も多い。

「地域建設会社をどう維持するのか、政策で示すべきだ」。北川義信石川県建設業協会会長は、地域への予算配分規模とともに、全国規模で事業展開するゼネコンと地域建設会社の役割をあらためて整理するよう訴える。岸本剛佐賀県建設業協会会長は「盛り上がっている地域建設業のマインドが冷え込む『心の不況』が一番怖い」と指摘。技術と経営に優れた地域建設業が持続的に発展できるよう、事業量の安定化を求める。

各協会は「厳しくても担い手の確保から目はそらさない」(岸本会長)との思いで一致している。そうした中、小野利廣福島県建設業協会会長のように「人を入れるアイデア」の追求と「競争性を確保した中での協調」をキーワードに挙げた上で、「もう一度再編しないと次の時代は乗り切れない」と次の一手を模索する動きも出てきた。

インフラの整備・維持管理や災害対応機能を維持するための固定費をどう見るべきか。地域の実情や経営規模に応じた政策とは-。15年度の会合は、地域建設業が直面する課題をあらためて浮き彫りにした。

「的は地域の安全・安心の確保。47協会が束になって的に向かいたい」(近藤会長)。全建は、事業量の確保と公共工事品確法の徹底を両輪に、地域建設会社の進むべき道を切り開く構えだ。(編集部・溝口和幸)

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