2015/12/28 国交省/実質携わらない企業、施工体制から排除を検討/工事の責任・品質に弊害

【建設工業新聞 12月 28日 1面記事掲載】

国土交通省は、実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除する方策を検討する。「基礎ぐい工事問題に関する対策委員会」(委員長・深尾精一首都大学東京名誉教授)が25日、石井啓一国交相に提出した中間報告で、資材の納入管理だけを行う販売代理店のような企業の参画について「施工上の役割や責任の不明確化、工事の品質低下、価格への影響等の弊害があるのではないか」と指摘。これを受けて国交省は年明け以降に検討を始める建設業の構造的な課題の一つに取り上げる。

対策委は、横浜市で発覚した傾斜マンション問題と、それをきっかけに行った調査で、杭の施工データ流用が複数あった実態を踏まえ、再発防止策を検討。基礎杭工事に関して、現場に即した明確なルールの下で適正な施工を確保する対策に加え、構造的な課題に関する対策について、建設業の将来を見据えながら別途設ける議論の場で検討するよう求めた。

構造的な課題として挙げたのは、▽元請・下請の責任・役割の明確化と重層構造の改善▽技術者や技能労働者の処遇・意欲と資質の向上▽民間工事での役割・責任の明確化と連携強化-の3点。

横浜市の傾斜マンションでは、1次下請が主な工事を再下請し、「自ら総合的に企画・調整等を行っていなかった」と指摘。建設業法で禁止する一括下請負(丸投げ)の判断基準となる工事への「実質的関与」が明確になっていないのではないかと問題を提起した。

その上で、施工の多くを複数の下請が行う重層的な施工体制では、元請による統括的管理責任のあり方や元請の監理技術者と下請の主任技術者のそれぞれの役割を明確化し、実質的に施工に携わらない企業の排除とその位置付けの再整理を行うよう求めている。

加えて、民間工事では、公共工事のような最低限の価格を担保する仕組みがなく、元請が過度な安値受注を行って「下請にしわ寄せする弊害があるのではないか」とも指摘。適正な施工を図るために、工期変更や追加工事などに関する協議ルールの明確化といった具体的な検討も求めた。

建設業の構造的課題として指摘されたこれら事項について国交省は、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)に設置している基本問題小委員会で議論するよう準備を進める。

建設業の構造的な課題に関する対策は次の通り。
【元請・下請の責任・役割の明確化と重層構造の改善】
△元請の統括的な管理責任のあり方
△元請監理技術者と下請主任技術者それぞれの施工管理上の役割の明確化
△下請の主任技術者の適正配置のあり方
△実質的に施工に携わらない企業の施工体制からの排除

【技術者や技能労働者の処遇・意欲と資質の向上】
△技術者制度のあり方
△技能労働者の就労構造のあり方
△技能労働者の経験が蓄積されるシステムの導入
△就労環境の改善(適切な賃金水準の確保、教育訓練の充実・強化等)

【民間工事での役割・責任の明確化と連携強化】
△発注者・設計者・元請・下請等の請負契約等の適正化(設計変更など協議のルールの明確化等)
△施工責任を専門的見地から審査・検証・調停する中立的な組織・機能の検討
△施工に関する情報の積極的な公開。

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