2016/01/28 中建審・社整審小委/構造問題の議論開始/民間工事にも「発注者責任」を

【建設工業新聞 1月 28日 1面記事掲載】

中央建設業審議会(中建審、国土交通相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会(大森文彦委員長)が27日に東京都内で開かれ、今後の建設業政策の基本方向に関する議論が始まった。昨年発覚した基礎杭工事のデータ流用問題の再発防止策として国土交通省の有識者会議が指摘した建設業の構造的な課題を軸に議論を進め、6月ごろに中間取りまとめを行う。

構造的な課題として、重層下請構造や民間工事を含めた建設生産システムの適正化・効率化、地域の中小企業が抱える小規模化や後継者問題などについて踏み込んだ議論を行う予定だ。会合で宮内秀樹政務官は「杭工事問題の再発防止策では、重層下請構造、技能労働者の処遇、請負契約上の課題などが指摘された。建設業を取り巻く社会経済情勢を踏まえ、政策の大きな方向性を捉えて議論していただく。日本の建設業にとって大きな一歩を踏み出せるようにしていただきたい」と要請した。

大森委員長は「『建設産業政策2007』『建設産業の再生と発展のための方策2011』『同2012』と産業政策が続いてきた。時代背景も変わる中、国民に有益な提言を行えるようにしたい」と述べた。

建設業界の委員からは、全国建設業協会(全建)の岩田圭剛副会長が、官民の発注工事の間で単価に格差があると指摘。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で示された「適正利潤」が確保されるよう、「公共工事に類するような発注者責任を民間工事でも整理していただきたい」と訴えた。

民間発注者の委員からは、谷澤淳一三菱地所取締役常務執行役員が「発注者として品質の良いものを提供する責任がある。設計変更の対応の仕方などを検討していく必要があると考えている」と述べた。

このほか、公認会計士・税理士の丹羽秀夫委員は、取引先別の収益の開示を求める国際財務報告基準「IFRS15号」の17年1月からの適用を見越し、「民間工事が公共工事に比べて利益率が低いのが実態だとすると、利益を出すための一定の目配りが必要ではないか」と指摘。これに関連して古阪秀三委員(京大大学院教授)は、議論に生かす建設業の実態を示すデータについて「土木と建築を分けて示してほしい」と国交省に求めた。

建設業の法令違反が後を絶たない中、建設業許可更新時に最新の制度を再確認するための教育の必要性や、業許可に当たって常勤が求められる経営業務管理責任者が「法令順守管理責任も負うべきではないか」(丹羽委員)との指摘も出た。

《基本問題小委の主な検討課題例》
【建設生産システムの適正化・効率化】
施工の専門化・分業化等を背景とする建設生産システムの重層構造で、施工責任の不明確化や労務費へのしわ寄せ、施工に携わらない企業などの課題が指摘される中、生産性の向上に資する観点から、民間工事も含め、建設生産システムの適正化・効率化を図る

【建設業を支える技術者や担い手の確保・育成】
将来の社会資本の品質確保と適切な機能維持を図る観点から、優秀な技術者の確保・育成を図るとともに、技能労働者の大量退職時代を控え、将来を担う若者の入職・定着をはじめ、中長期的な担い手確保に向けた方策を講じる

【建設企業の持続的な活動が図られる環境整備の推進】
地域の中小建設業が抱える企業の小規模化や後継者問題などの経営上の課題や、多様な建設企業の存在などを踏まえ、将来にわたる建設企業の持続的な活動に向けた環境整備を図る。

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