2016/02/03 自治体発注工事―繰越手続き前倒し広がる/施工時期平準化へ柔軟対応拡大/本社調査

【建設工業新聞 2月 3日 1面記事掲載】

自治体が発注する工事の施工時期を平準化するため、予算上の特例措置を柔軟に活用する動きが広がっていることが、日刊建設工業新聞の調査で分かった。年度末までの工期を延長する場合に必要となる次年度への支出繰り越しの議会承認を、従来の2~3月議会から前年の11月や9月議会に前倒しする動きが都道府県などの間で目立ってきた。国の発注工事以上に繁閑の波が激しい自治体発注工事の施工時期を平準化する工夫に、国土交通省も注目している。

自治体が発注済みの工事で年度末までの工期を延長する場合、支出を次年度に繰り越す「繰越明許費」の議会承認を得る必要がある。通常は、年度末の2~3月議会に承認を求める議案を提出することが多いが、これを11月議会、さらに前の9月議会に提出する動きが出ている。

青森県はこれまで、繰越明許費を2月議会で計上してきたが、15年度からはこれを11月議会に早め、発注時期の前倒しに取り組むことにした。

公共工事の完成時期は、単年度予算の原則から年度末に集中する。予算上の特例措置となる繰り越し制度や工期が比較的短い工事に債務負担行為を活用することは、3月末に工期末が集中するのを回避することにつながる。

通常は閑散期とされる年度初めの4~6月の施工量を確保することにもつながり、建設業の経営健全化や労働環境の改善が期待できる。

改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針では、年度を通した安定的な工事量の確保が生産性の向上にも寄与するとして、発注や施工時期の平準化に努めることを発注関係事務の一つとして明記した。

繰り越しの議会承認前倒しなど、平準化に向けた予算措置の工夫は、発注者の共通ルールとして定められた運用指針に呼応する動きともいえそうだ。

山形県も13年度に2月議会から12月議会に繰り越し承認を早めており、静岡県や大分県も15年度から同様の前倒し措置を導入し、下半期に発注する工事の適切な工期確保に努めることとした。沖縄県は13年度に、それまでの11月議会承認を9月議会承認へと前倒ししている。

和歌山県は、昨年12月に発表した「公共工事の発注調整について」の中で、2月議会に上程する繰り越し承認議案を、必要性が生じた段階で上程する「臨時の繰り越し議案上程」に変更するなど、特例措置の柔軟な運用に取り組み始めた。

施工時期の平準化に向けた繰り越し制度の積極的で柔軟な活用は、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、富山県、石川県、山梨県、愛知県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、宮崎県などにも見られる。繰り越しに加え、2カ年の債務負担行為の活用やゼロ県債を増額する事例もあり、着工前に労務や資機材の確保に充てる「余裕期間」の設定などと組み合わせた適正な工期設定が広がっている。

ピーク時の工事稼働件数を閑散期に振り分ける予算上の工夫は今後さらに広がる可能性もある。

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