2016/10/19 建設業界、供給力への不安否定/足りないのは仕事量/日建連労働委リポート

【建設工業新聞 10月 19日 1面記事掲載】

日本建設業連合会(日建連、中村満義会長)の労働委員会(今井雅則委員長)は18日、「『技能労働者不足』に対する考え方」と題したリポートをまとめた。指標や統計に基づき「処遇改善を行えば供給力に不安はない」と主張。必要な賃金、労働条件によって技能者は確保できる状態にあり、「施工余力に不安はない」としている。根拠のない「人手不足」との認識は、公共投資の削減や外国人労働者の増加につながりかねないとして今後、供給不安の払しょくにリポートを役立てる。

リポートは、過去20年にわたる建設産業の姿をさまざまな角度から検証した上で、労働生産性が当時のままであったとしても「需要増への対応力は十分ある」と強調している。具体的な根拠として、建設投資、建築着工床面積、新設住宅着工戸数は20年で約40%減少したのに対し、建設業許可業者と技能者の減少率は17%、25%にとどまることを挙げた。すべての技能者が建築に従事すると仮定すれば、1人当たりの建設投資額は17%減、着工床面積は32%減となっており、「足りないのは仕事量」(日建連幹部)との見方も示している。

国の調査を基に、建設業就業者数(15年500万人)と技能者数(同334万人)は10年以降ほぼ横ばいで推移し、高卒者の入職(同2万人弱)は09年比で60%増となっているとも説明。建設業の男性労働者の賃金が13年以降に上向き、全産業や製造業との格差が縮小していることも明らかにし、相応の賃金の設定や宿舎の整備といった「産業の自助努力」(日建連幹部)によって、必要な地域に技能者を融通できる状態にあると結論付けている。

建設業の供給力をめぐっては、施工への影響から、公共投資の増加に否定的な意見や、外国人労働者を受け入れるよう求めたりする議論が出ており、日建連は今回のリポートによって、建設業界は人手不足とする見方に「一石を投じる」(幹部)考えだ。

条件次第で施工力を確保できることも広くアピール。加えて、今後は高齢の技能者の離職が続くだけに、会員企業には処遇改善が供給力の確保とともに新規入職者の獲得に欠かせないことをあらためて認識してもらい、処遇悪化につながるダンピング受注の排除など適正な競争環境の整備に努める。

今井委員長は同日、「昨今マスコミ等で言われている建設業の人手不足について一つの見方、考え方をまとめた。広くご理解をいただきたい」とのコメントを発表した。

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