2016/11/10 公共工事の執行平準化/当初予算にゼロ国債計上へ/4~6月の施工量確保狙い

【建設工業新聞 11月 10日 1面記事掲載】

公共工事の執行を平準化するため、通常は毎年度の補正予算で計上されているゼロ国債(国庫債務負担行為)を17年度の当初予算に盛り込む公算が強まってきた。年末の予算編成に向け、政府が設けている複数の会議で、施工時期の平準化を一段と進める財政措置として活用が議論されている。当初予算への計上が実現すると、入札手続きを今までより早められ、閑散期の4~6月の施工量確保が期待できる。

ゼロ国債は、初年度に国費の支出がゼロとなる債務負担行為のこと。年度内に契約行為だけを済ませておき、国費支出を伴う2年目の年度当初には工事に着手できるようにする。これを活用して事業の早期執行を図れば、通常なら工事量が落ち込む年度当初からの施工が可能になる。

ただ、ゼロ国債を手当てする補正予算案は例年、年明けから通常国会の初めの段階で審議されており、予算が成立しないと入札契約手続きに入ることができない。3月の年度末までの短期間に契約が締結できなければ、翌年度当初からの工事着手は難しくなる。

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)や経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)では、公共工事の執行平準化や閑散期となる4~6月期の工事量を確保するため、ゼロ国債をより積極的に活用するなど、財政面での対応が論点として示されている。

8日に開かれた経財諮問会議では、4人の民間議員(伊藤元重学習院大学教授、榊原定征東レ相談役最高顧問、高橋進日本総合研究所理事長、新浪剛史サントリーホールディングス社長)が「生産性向上等を支える社会資本整備に向けて」と題した論点ペーパーを提出。年度当初からの工事を可能とするゼロ国債の活用を提案した。

提案では「当初予算でゼロ国債を手当てすることも想定されている」(内閣府)という。補正予算にゼロ国債を計上しても、4~6月期の事業量が狙い通りには増えていない実態を改善するのが狙いだ。

年末に閣議決定する17年度予算案で仮にゼロ国債の計上が実現すれば、発注機関は補正予算で手当てするより早い段階から入札契約手続きに入ることができる。次の年度となる18年4月にはスムーズに着工でき、4~6月期の工事量を増やすことにつながる。

技術者の専任配置が求められない余裕期間制度と組み合わせれば、建設会社は切れ目なく施工を手掛けることができるようになり、人材や資機材の効率活用や収入の安定化が見込めるとみられている。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る