2017/04/04 国土交通省 「第2回 建設産業政策会議 企業評価ワーキンググループ」を開催。経審評価項目の見直し、専門工事業者の評価について議論。

4月3日、国土交通省は「第2回 建設産業政策会議 企業評価ワーキンググループ」を開催した。

「建設産業政策会議」では、劇的な進展を遂げるAI、IoTなどのイノベーション、労働力人口の減少といった事態を正面から受け止め、10年後においても建設産業が「生産性」を高めながら「現場力」を維持できるよう、法制度はじめ建設業関連制度全体の基本的な枠組みについて検討を行う。
昨年10月、「法制度・許可ワーキンググループ」、「企業評価ワーキンググループ」、「地域建設業ワーキンググループ」の3つのWGを立ち上げ、今回は第2回の「企業評価ワーキンググループ」が開催された。


「企業評価ワーキンググループ」では以下が議論される。
<企業評価全般について>
・様々な場面・段階における建設会社の企業評価
・建設会社の有益な企業評価情報の提供・活用
<企業評価の評価軸・審査方法について>
・生産性の向上に取り組む企業の適正な評価
・働き方の改革に取り組む企業の適正な評価
・地域における建設企業の役割維持に向けた評価
・申請書類等の簡素化
・多様な経営判断への対応


最初に(一社)全国建設業協会、(一社)群馬県建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国基礎工事業団体連合会、神奈川県 県土整備局の代表の方より報告があった。
(一社)全国建設業協会からは、大手と地域の中小建設業の評価は分けて評価する、地域における役割(防災協定、災害対応、除雪等)を大きく評価する、経審については、技能者の直接雇用、建設機械の自社保有を積極的に評価する、機械の保有が経営状況でマイナスになるのは見直すべき等の意見が出された。また制度改正は個々の企業に大きな影響を及ぼすため、方向性を示した後、時間をかけて進めるべきという意見も出された。
(一社)群馬県建設業協会からは、経審制度に関して働き方改革、生産性向上等の評価項目は将来的に大切等の意見が出された。
(一社)全国基礎工事業団体連合会では、「優良・適格業者選定制度」により組合員の評価を12項目に分けて評価の上、インターネット上で公開している現状の紹介がされ、「専門工事業者版の経審」が必要との意見が出された。

質疑応答では以下の意見が出された。
・経審改正は慎重に時間をかけて進めるべき。
・総合工事業者と専門工事業者は役割が違うのを1つの指標で見るのはどうか。
・経審のみで評価している発注者もあれば主観点を加えている発注者もある。経審は全発注者にとって有用なものとする。
・人員、若手確保に努めている企業を積極的に評価してほしい。
・高齢者の評価をできないか。高齢者も評価しないと10年後は厳しい。
・雇用については経審レベルで取り入れてほしい。
・生産性向上や働き方改革などの産業の方向性は経審に取り込むことは可能だが、地域のものは区別したほうがいい。

続いて、以下の3点について議論がされた。

①公共工事における企業評価に係る評価項目
○公共工事における企業評価のプロセス(経営事項審査、発注者別評価、総合評価)において評価すべき内容を踏まえ、それぞれのプロセスにおいてどのような項目で評価を行うことが適当か。
○建設企業に今日的に求められる社会的役割や政策的要請を踏まえ、新たに追加すべき評価項目はないか。
○建設企業としての適格性や適正な施工の確保の観点から評価を行うという制度本来の趣旨を踏まえ、各公共発注者が行っている発注者別評価について、見直す点はないか。
○申請する者や審査する者にとって過大な負担となっていないか。

現在は、都道府県の競争参加資格審査及び総合評価、経営事項審査における評価項目の例が示された。
企業評価において今後重要性が高まると考えられるものとして、CSR活動、コーポレートガバナンス、生産性向上(ICT機器、生産性指標 等)、働き方改善への取り組み(週休2日、長時間労働是正)等が挙げられた。

参加された委員からは、
・経審評価に取り込むべき内容は10年後を見据えた内容を取り入れる。他の項目は入札参加や総合評価で評価すべき。
・急激に制度を大幅に変えるのはいかがなものか。災害、機械等はWTO専門の業者に求めるのか。ランク別に評価を別にすることも考えるべきでは。
・福祉の状況は経審に特化する。
・経審では信用力を評価する。
等の意見が出された。

②下請企業に関する企業評価情報の提供
○建設工事における下請企業(専門工事企業)の果たす役割の変化を踏まえ、下請企業に対する評価のあり方をどのように考えるか。
・下請企業の評価は施工能力と密接に関わると考えられるが、様々な専門的業種が存在する中、共通の枠組みとすることができるか。
・民民関係における情報提供という趣旨や、下請企業にも様々な経営実態の企業が存在することに鑑み、評価項目を必要に応じて選定できる柔軟な制度とすべきか、一律の評価項目を設定して画一的な評価を行う制度とするか。
・専門工事業者の評価は、実際に現場で活躍する技能労働者や、現場で活用する建設機械に因るところが大きいと考えられるが、どのような評価方法が考えられるか。
・専門工事企業の実績は元請としてではなく下請としての実績に依るところが大きいことに鑑み、こうした下請工事の実績をどのように評価することが妥当か。

下請比率は下請構造の重層化に伴って上昇傾向にあったが、近年では50%後半で推移している。
また全業種の元請完工高がゼロであるにもかかわらず、経審を受審している企業は5.3%であることが報告された。

参加された委員からは、
・専門業者が全てが機械やオペレータを抱えているわけではない。大きい会社は下請を使っている。
・ISOの購買管理でも下請評価をしている。
・工事実績を最も重要視している。データとして蓄積していくとか。
・これまでは元請中心だったが、専門工事業者の評価指標についてもアイデアを出していただきたい。
等の意見が出された。

③民間工事における企業評価情報の提供
○民間工事の発注者は建設企業の情報を十分に持たないケースも多く、情報の非対称性が存在していることを踏まえ、適切な事業者選定に資する企業評価情報の提供のあり方についてどのように考えるか。
・許可申請時に提出された書類の閲覧制度を、より使いやすくできないか。
・企業がHP等を活用して、必要とされる企業情報を自ら開示するよう促すことができないか。
・経審受審企業についてはその結果がHPを通じて公開されているが、経審を受審していない企業(民間工事の受注者)についても、主要な情報については、発注者が企業間比較を行えるような制度が考えられないか。

公共工事と民間工事に重視される情報の違いとして、現行経審の評価指標では、経営規模(完成工事高・自己資本額)、経営状況、技術力については求められるが、社会性については民間発注者がどのような建設企業を受注者として選定したいと考えるかによって重要度が異なること、他に民間工事にて求められる情報の例としては、営業力(ニーズにあった提案・施工、瑕疵等に対する保証、完成後のアフターサービス(メンテナンス等)が挙げられた。

参加された委員からは、
・一般の方にどう提供するのか、どうやってわかりやすく示すか。インターネットで公開するとか。
・民間発注者は、ネガティブチェック、例えば事故、施工ミス、指名停止などを気にする。経審と合わせて見るとか工夫の余地がある。
等の意見が出された。


「建設産業政策会議 企業評価ワーキンググループ」は、今年6月をめどに取りまとめがされる。



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