2017/04/20 国交省/適正工期・代金設定は受発注者双方の責務/業法改正で方向性、WGに提示
【建設工業新聞 4月 19日 1面記事掲載】
国土交通省は18日、10年後を視野に入れた建設産業政策を議論している同省の有識者会議に、建設業法改正などの方向性を示した。長時間労働の是正や担い手確保などの課題を踏まえ、業法で適正な工期や請負代金での契約締結などを受注者の責務として規定。受注者が規律を順守できるよう、民間を含む発注者にも適正工期の設定といった責務を規定する。受発注者が対等な関係で役割と責任を分担し、適正施工の確保につなげる。
有識者会議「建設産業政策会議」の下に設置した「法制度・許可ワーキンググループ(WG)」(座長・大森文彦東洋大教授・弁護士)の第3回会合を18日に開き、議論の取りまとめに向けた基本的な考え方(案)を同省が提示した。今後は、直ちに対応する内容と中長期的に対応にする内容に分けて法改正の議論を進める方針だ。
建設業に罰則付き時間外労働規制が適用されるなど業界の今後を見据え、受注者の新たな規律を業法に盛り込む。適正な工期・請負代金での契約締結や、建設企業が雇用する技能労働者の確保・育成、工場製品の売買契約での製品品質の確認などを責務として例示。重層下請構造の実態を踏まえ、元下請関係のあり方も併せて検討するとした。
受注者が規律を順守するためには発注者の果たす役割も重要になると判断。発注者側の新たな規律も盛り込む。具体的には、適正な工期設定や、適切な設計図書の変更、請負代金額・工期の変更などを責務として列挙した。これらが実現すれば、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で規定された公共発注者の責務を民間発注者にも広げることになる。
業法上、発注者は発注経験を問わず一くくりに扱われており、発注経験のない個人発注者などを保護するために必要な情報提供や受注者からの契約内容の説明のあり方なども新たに規定する方向だ。
請負契約以外の契約についても制度的な位置付けを検討する。コンストラクション・マネジメント(CM)方式では、アットリスク型はコンストラクション・マネジャー(CMr)が発注者に対して建設工事を完成させる責務を負っていることから請負契約として扱い、ピュア型は発注者の補助が目的のため発注者が利用しやすい仕組みなどを議論する。
業法に位置付けのない技能労働者を制度上に位置付けることも検討。技能労働者自身の責務や技能労働者を雇用する企業の責務、施工体制台帳での登録基幹技能者などの位置付けの明確化などを例示した。
現行法では500万円未満の軽微な建設工事は建設業の許可が不要だが、軽微な工事でも技術者の配置を求めるなど無許可業者にも適用される規定を拡充。一定種類の工事を業として営む場合の届け出制度や登録制度を検討する。
国土交通省の建設産業政策会議法制度・許可WGの取りまとめに向けた基本的な考え方(案)は次の通り。
■契約関係とその規律
【1】請負契約に対する規律
▽受注者の規律に、適正な施工の確保や建設業の働き方の改善も踏まえ、適切な工期設定で契約を締結する責務などを盛り込む方向で検討
▽発注者の規律には、受注者が規律を順守する上で重要な要素となる適切な工期設定や工期変更などを盛り込む方向で検討。併せてCM制度など発注者を支援する方策も検討
▽経験の少ない発注者の保護のため必要な情報提供などを検討
▽許可行政庁と注文者の関係では、不適切な請負契約の締結などを行った注文者に対し勧告などができる仕組みとする方向で検討
【2】工事の実施に関連して締結する請負契約以外の契約に対する規律
▽発注者が締結する請負契約以外の契約(CM方式による委託契約)、受注者が締結する請負契約以外の契約(工場製品製造業者との売買契約)について、契約内容の特性を踏まえつつ、適正な施工を確保する上で必要な規律を設ける方向で検討
▽CM方式のうちアットリスク型は建設工事を完成させる責務に関して請負契約と同様の扱いとする方向で検討。ピュア型は発注者体制補完の観点から発注者が利用しやすい仕組みやCMrに求められる能力(施工管理能力など)のあり方などについて検討
▽受注者が工場製品の売買契約を締結した売り主には、工場製品に起因して建設生産物に不具合が生じた場合、製造者に対する報告徴収や立ち入り検査などを盛り込む方向で検討
■許認可制度
▽許可制度全体については、建設工事従事者の労働福祉や地域の守り手の確保という観点も踏まえ、今後、許可制度の全体像を見直す方向で検討
▽経営業務管理責任者の要件は当面、経験年数の見直しを行う一方、経営のガバナンスの観点から役割や責任を明確化するとともに、より実効性のある要件への見直しも含めて検討
▽許可制度の対象外の軽微な工事は、無許可業者にも適用される規定の拡充を検討するほか、届出制度や登録制度の検討など、より実効性を高めていく方向で検討
▽許可に関する申請書類などは、添付書類も含めた電子申請のあり方や虚偽申請に関する対応のあり方を含め書類などを簡素化する方向で検討
■技能労働者の位置付け
▽技能労働者の確保・育成の観点から、技能労働者を制度上で位置付ける方向で検討
▽具体的には、技能労働者自身や雇用する建設会社に対する責務などについて検討。
有識者会議「建設産業政策会議」の下に設置した「法制度・許可ワーキンググループ(WG)」(座長・大森文彦東洋大教授・弁護士)の第3回会合を18日に開き、議論の取りまとめに向けた基本的な考え方(案)を同省が提示した。今後は、直ちに対応する内容と中長期的に対応にする内容に分けて法改正の議論を進める方針だ。
建設業に罰則付き時間外労働規制が適用されるなど業界の今後を見据え、受注者の新たな規律を業法に盛り込む。適正な工期・請負代金での契約締結や、建設企業が雇用する技能労働者の確保・育成、工場製品の売買契約での製品品質の確認などを責務として例示。重層下請構造の実態を踏まえ、元下請関係のあり方も併せて検討するとした。
受注者が規律を順守するためには発注者の果たす役割も重要になると判断。発注者側の新たな規律も盛り込む。具体的には、適正な工期設定や、適切な設計図書の変更、請負代金額・工期の変更などを責務として列挙した。これらが実現すれば、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で規定された公共発注者の責務を民間発注者にも広げることになる。
業法上、発注者は発注経験を問わず一くくりに扱われており、発注経験のない個人発注者などを保護するために必要な情報提供や受注者からの契約内容の説明のあり方なども新たに規定する方向だ。
請負契約以外の契約についても制度的な位置付けを検討する。コンストラクション・マネジメント(CM)方式では、アットリスク型はコンストラクション・マネジャー(CMr)が発注者に対して建設工事を完成させる責務を負っていることから請負契約として扱い、ピュア型は発注者の補助が目的のため発注者が利用しやすい仕組みなどを議論する。
業法に位置付けのない技能労働者を制度上に位置付けることも検討。技能労働者自身の責務や技能労働者を雇用する企業の責務、施工体制台帳での登録基幹技能者などの位置付けの明確化などを例示した。
現行法では500万円未満の軽微な建設工事は建設業の許可が不要だが、軽微な工事でも技術者の配置を求めるなど無許可業者にも適用される規定を拡充。一定種類の工事を業として営む場合の届け出制度や登録制度を検討する。
国土交通省の建設産業政策会議法制度・許可WGの取りまとめに向けた基本的な考え方(案)は次の通り。
■契約関係とその規律
【1】請負契約に対する規律
▽受注者の規律に、適正な施工の確保や建設業の働き方の改善も踏まえ、適切な工期設定で契約を締結する責務などを盛り込む方向で検討
▽発注者の規律には、受注者が規律を順守する上で重要な要素となる適切な工期設定や工期変更などを盛り込む方向で検討。併せてCM制度など発注者を支援する方策も検討
▽経験の少ない発注者の保護のため必要な情報提供などを検討
▽許可行政庁と注文者の関係では、不適切な請負契約の締結などを行った注文者に対し勧告などができる仕組みとする方向で検討
【2】工事の実施に関連して締結する請負契約以外の契約に対する規律
▽発注者が締結する請負契約以外の契約(CM方式による委託契約)、受注者が締結する請負契約以外の契約(工場製品製造業者との売買契約)について、契約内容の特性を踏まえつつ、適正な施工を確保する上で必要な規律を設ける方向で検討
▽CM方式のうちアットリスク型は建設工事を完成させる責務に関して請負契約と同様の扱いとする方向で検討。ピュア型は発注者体制補完の観点から発注者が利用しやすい仕組みやCMrに求められる能力(施工管理能力など)のあり方などについて検討
▽受注者が工場製品の売買契約を締結した売り主には、工場製品に起因して建設生産物に不具合が生じた場合、製造者に対する報告徴収や立ち入り検査などを盛り込む方向で検討
■許認可制度
▽許可制度全体については、建設工事従事者の労働福祉や地域の守り手の確保という観点も踏まえ、今後、許可制度の全体像を見直す方向で検討
▽経営業務管理責任者の要件は当面、経験年数の見直しを行う一方、経営のガバナンスの観点から役割や責任を明確化するとともに、より実効性のある要件への見直しも含めて検討
▽許可制度の対象外の軽微な工事は、無許可業者にも適用される規定の拡充を検討するほか、届出制度や登録制度の検討など、より実効性を高めていく方向で検討
▽許可に関する申請書類などは、添付書類も含めた電子申請のあり方や虚偽申請に関する対応のあり方を含め書類などを簡素化する方向で検討
■技能労働者の位置付け
▽技能労働者の確保・育成の観点から、技能労働者を制度上で位置付ける方向で検討
▽具体的には、技能労働者自身や雇用する建設会社に対する責務などについて検討。
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