2017/06/14 国交省/産業政策会議取りまとめ素案/好循環へ制度インフラ再構築、働き方改革を推進

【建設工業新聞 6月 14日 1面記事掲載】

国土交通省は13日に開いた第6回建設産業政策会議(座長・石原邦夫東京海上日動火災保険相談役)で、取りまとめの素案を提示した。建設産業が働き方改革や生産性向上の取り組みを通じて良質な建設サービスを提供し、安全・安心や経済成長に貢献することで国民の理解と信頼を拡大。これを若者の入職につなげる好循環を実現するため、各種の「制度インフラ」を再構築するとしている。次回の会議で取りまとめを行う。

会議の冒頭、根本幸典政務官は「これまでの議論の成果を踏まえて全体の取りまとめに向けた議論を行う段階に来た。今後の建設産業を考える上での基本的な視点について意見を頂き、皆さんの思いを取りまとめに反映させていきたい」と活発な議論を要請した。

取りまとめには、今後の建設産業の目指すべき姿、今後の建設産業政策を盛り込む。各種の制度インフラの再構築を中心に政策の方向性を示し、現在と将来世代に誇れる建設業の姿を目指す提言とする。

素案では今後の建設産業について、災害時の応急復旧や防災・減災など国民の安全・安心に寄与する役割は将来にわたって「不変」とする一方、インフラや建築物の老朽化対策など時代とともに変わるニーズに的確に対応していく「進化」も求められるとした。

生産年齢人口が減少する中、建設産業は「現場力」を維持するとともに、イノベーションをあらゆる産業で取り入れる「超スマート社会」の実現の一翼を担うことで若者に夢や希望を与える産業であり続けると強調。このためには個々の企業の取り組みに加え、業界全体や発注者、設計者、地域などさまざまな主体との連携による取り組みが求められるとした。

今後の施策を、▽働き方改革▽生産性向上▽良質な建設サービスの提供▽地域力の強化-に4分類して整理した。

新たな担い手を呼び込むため、長時間労働の是正や週休2日の推進など働き方改革を強力に推進。業界を挙げた処遇の改善や、民間を含めた発注者と連携して適切な工期設定などに取り組む必要があるとした。生産性の向上を進め、働き方改革に取り組む中でも建設産業のパフォーマンスを維持・向上していくことが求められるとした。

発注者や国民の理解を得るには「外向き」の取り組みが一段と重要になるとし、その根幹は、良質な建設サービスを高い水準で確保して国民や発注者の利益を一つ一つ実現していく不断の取り組みにこそあると主張。建設産業の健全な発展なくして国民の利益は実現しないという理解の醸成を図る必要があるとしている。

地域の守り手、地方創生の担い手としての地域建設業の持続性を確保するため、市町村など地域が一丸となった地域力強化の取り組みも必要だとした。

取りまとめ素案で示された主な施策は次の通り。

■働き方改革
▽働き方改革について社会全体の理解を得る機運の醸成(先進的なモデル地域を選定し地域レベルでの働き方改革の検討促進)
▽働き方に関する経営事項審査での評価
▽適切な工期設定などのためのガイドラインの策定
▽建設キャリアアップシステムを活用した能力評価基準の策定・普及と実効性確保
▽週休2日の推進で稼働日数が減少しても技能労働者の総収入が減らないための方策

■生産性向上
▽設計と施工の初期段階からの連携を図るためのフロントローディング(ECI方式の活用など)の推進
▽すべての建設生産プロセスでICTなどを活用するため3次元データなどのプラットフォームを整備
▽現場で「施工チーム」を形成している下請企業間の契約形態の再構築
▽許可申請書類、経営事項審査申請書類などの簡素化・電子申請化
▽建設工事における電子商取引の推進

■良質な建設サービスの提供
▽受発注者双方の責任の明確化
▽地方自治体や個人発注者などにおける発注体制の補完
▽設計の質を高めるための適正な履行期間の設定と履行期限の平準化
▽法令違反への対応の厳格化
▽「技能」や「技能労働者」の制度上の位置付け

■地域力の強化
▽地域貢献に関する経営事項審査での評価
▽地域の守り手としての建設企業のための許可制度の見直し
▽複数の建設企業などによる事業連携の促進
▽地域建設業の安定的な担い手確保に資する入札契約方式
▽地域建設業と市町村との連携強化

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る