2017/07/26 国交省/中建審に経審・契約約款の改正案提示/減点評価の0点撤廃、マイナス値に

【建設工業新聞 7月 26日 1面記事掲載】

国土交通省は25日、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関、石原邦夫会長)の総会を東京都内で開き、経営事項審査(経審)と建設工事標準請負契約約款の改正案を提示した。経審では、社会保険未加入などに対する減点評価の寄与度を高めるほか、地域貢献などの評価を拡充するなどの見直しを行う。公共工事の契約約款には、下請を含め社会保険加入企業に限定する条文などを加える。

今回の改正は、建設産業の将来展望や建設業関連制度の基本的枠組みを検討してきた同省の有識者会議「建設産業政策会議」が今月4日に石井啓一国交相に提出した政策提言を具体化する施策の初弾となる。

経審は18年4月以降の申請からの適用に向けて準備を進める。契約約款の改正は中建審が速やかに実施を勧告する。

経審の改正は、W点(その他社会性等評点)の評価項目が対象。現行制度では、W点の合計がマイナス値になっても「0点」とみなされるが、社会保険未加入企業への減点措置や、建設業法違反に対する減点措置を厳格化するため、合計値のボトムとなっている0点を撤廃。マイナス値をそのままの値で評価する。

一方で、防災活動への貢献状況の加点幅を拡大。国や地方自治体などと防災協定を締結している建設業者はW点の加点幅が現行の15点から20点に拡大する。

建設機械の保有に関する加点方法も見直す。現行制度では1台当たり1点ずつ加点していくが、少ない台数でも建設機械を保有する企業を高く評価。1台保有を5点とする。最大15点(14台以上保有)の上限は変更しない。

公共工事の契約約款の改正では、元請企業に対し、2次以下を含む下請を社会保険加入企業に限定する規定を新設する。自治体発注工事の実情に配慮し、1次下請だけに一定の対策を講じるなど、5種類の条文を用意して選択できるようにする。

公共工事、民間建設工事(大規模工事)、民間建設工事(小規模工事)、下請契約の四つの約款すべてを対象に、受注者が作成して発注者に提出する請負代金内訳書に法定福利費を内訳明示することを規定。社会保険加入費用の原資となる法定福利費を明示することで、発注者への理解促進の一助とする。

総会ではこのほか、建設産業政策会議が取りまとめた主な施策の概要や、社会保険加入促進対策の状況を報告。建設業の働き方改革については6月に開催された関係省庁連絡会議の初会合で示された今後の取り組みなどが説明された。

国交省の田村計土地・建設産業局長は「前回の中建審で建設産業政策会議を設置し、10年後を見据えた制度インフラの再構築について議論いただいた。経審と契約約款の改正について忌憚のない意見を頂きたい」と述べた。

《経審改正のポイント》

〈1〉W点(その他社会性等評点)のボトムの撤廃(社会保険未加入企業等への減点措置の厳格化)

社会保険のより一層の加入促進と、建設業法に違反する不正が行われない環境整備のため、減点措置を厳格化。現行制度では「0点」だったWの最低点をマイナス1995点に

〈2〉防災活動への貢献状況の加点幅の拡大

建設業者の「地域の守り手」としての役割の評価を拡大し、こうした企業を将来にわたって後押し

〈3〉建設機械の保有状況の加点方法の見直し

少ない台数の保有を高く評価することで、建設機械の購入による経営状況(Y点)の低下、結果として総合評定値(P点)の影響をカバーできる範囲を拡大。1台保有の場合、Wが5点(現行1点)、Pが7.05点(1.35点)に。大型ダンプ車については、現行は自家用だけが加点対象となっているが、主として建設業の用途に使用し、災害時に活躍する営業用の大型ダンプ車も評価対象に

〈4〉改正によってP点の最高点は2143点(現行2136点)、最低点は18点(281点)に

《公共工事標準請負契約約款改正のポイント》

〈1〉下請企業を含めた社会保険加入企業への限定

社会保険加入企業に限定する規定を新設。条文を、△2次以下含め加入企業に限定=2次以下にも違約罰を課す△同=1次に限り違約罰を課す△同=違約罰は課さない△1次下請だけ加入企業に限定=違約罰を課す△同=違約罰を課さない-の5パターンから選択

〈2〉請負代金内訳書での法定福利費の明示

受注者が作成して発注者に提出する請負代金内訳書に法定福利費を内訳として明示することを標準化(民間建設工事標準請負契約約款〈大規模工事〉、民間建設工事標準請負契約約款〈小規模工事〉、建設工事標準下請契約約款も対象)

〈3〉契約解除された場合の違約金の取り扱い

受注者側から契約解除された場合の違約金に関する規定を追加。受注者に代わる破産管財人などが契約を解除しても適用される

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