2018/01/16 国交省/社保未加入企業、業許可・更新認めず/18・19年度の取り組みで方向性提示

【建設工業新聞 1月 16日 1面記事掲載】

国土交通省は15日、18・19年度に取り組む社会保険加入対策の方向性を示した。未加入企業の建設業許可・更新を認めないよう建設業法の改正を検討する。加入対策の合理化・適正化の一環として、一人親方を含め技能者一人一人の加入状況が簡易に把握できる建設キャリアアップシステムの活用方法を検討し試行する。民間工事では、工事の施工を加入企業に限定する誓約書の活用を促進する。=2面に関連記事

12年度にスタートした社会保険未加入対策では、17年度に企業単位で許可業者の100%、労働者単位で製造業相当(9割)の加入を目標に設定した。目標年次の17年度には5年間の取り組み成果をより確実にするため対策を追加。引き続き18、19年度の2年間で▽地域での優良な取り組み事例の共有▽加入対策の更なる合理化・適正化▽未加入企業への対策強化-など6本柱の方向性に基づき、加入を徹底・定着させる取り組みを集中的に実施する。

社会保険の加入率は着実に上昇しているが、17年12月末時点で、建設業許可業者の3保険(雇用、健康、厚生年金)の加入率(推計値)は91・5%と、なお未加入企業が存在している。国交省は適正に保険料を負担する企業による公正・健全な競争環境の構築と技能者の処遇改善による担い手確保に向け、建設業許可業者から未加入企業を排除する方針。建設業法を改正し、許可・更新を認めない仕組みを検討する。

民間工事で加入企業に限定する取り組みが行われていないとの指摘を踏まえ、民間工事向けに施工者を加入企業に限定する誓約書のひな型を国交省が作成し、活用を促す。建設業関係団体を通じて受注者が発注者に誓約書を提出するよう推奨するほか、主要な民間発注団体や加入企業に限定する取り組みを実施していない自治体にも協力を呼び掛ける。

作業員名簿による加入の確認や一人親方の労働者性の判断などについて合理化・適正化を図るため、技能者一人一人の就業履歴や加入状況を簡易に把握できる建設キャリアアップシステムの活用方法を検討する。運用を始める18年秋以降、システムを活用した加入対策の取り組みを試行する。

このほか、現場に掲示する施工体系図に未加入企業を見える化することや、都道府県単位の「社会保険加入促進地域会議」の参加企業にステッカーなどを配布し対外的なPRを支援。従業員4人以下の個人事業所や一人親方など、法令上加入義務のない者への対応策も検討したい考えだ。

18・19年度の取り組みの方向性は次の通り。

【地域での優良な取り組み事例の共有】

〈社会保険加入推進地域会議の全国展開〉

▽地域の建設業者が参加し、事例共有や行動基準の採択を行う「社会保険加入推進地域会議」を全国展開

▽会議に参加した事業者に対し、ステッカーなどを配布し、対外的なPRを支援

【加入対策の更なる合理化・適正化】

〈建設キャリアアップシステムの活用〉

▽システムの導入により、一人親方も含め技能者の加入状況などの簡易な把握が可能となることから、システムの活用方法などについて関係者間で検討

▽18年秋以降、システム活用の取り組みを試行

〈未加入企業の更なる「見える化」〉

▽現場に掲示する施工体系図で未加入企業を見える化

【未加入企業への対策の強化】

〈建設業許可業者からの未加入企業の排除〉

▽未加入企業に対し建設業許可・更新を認めない仕組みとすべく、建設業法改正を検討

〈民間工事や地方自治体工事での対策強化〉

▽民間発注者への周知など誓約書の活用促進と、民間約款の改正(加入企業に限定する規定を創設)の検討

▽地方自治体工事での対策強化の更なる要請

【法定福利費の確保の取り組みの強化】

〈実態調査を踏まえ、法定福利費を下請まで行き渡らせるための施策の検討・実施〉

〈立ち入り検査の継続〉

▽標準見積書の活用や法定福利費の支払い状況の確認

【継続的な実態把握】

〈社会保険の加入や法定福利費・賃金の支払い状況について、引き続き実態調査を実施〉

【その他】

〈従業員が4人以下の個人事業所や一人親方など、法令上加入義務のない者への対応策について検討〉

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