2020/07/22 中建審/工期の基準作成、近く勧告/受発注者相互の有益関係構築へ

【建設工業新聞  7月 21日 1面記事掲載】

中央建設業審議会(中建審、柳正憲会長)は20日に東京都内で総会を開き、「工期に関する基準」を審議し了承した。10月1日施行の改正建設業法で「著しく短い工期による請負契約締結の禁止」を規定。中建審が作成した工期の基準は著しく短い工期を判断する重要な要素の一つとなる。中建審は公共発注機関や建設業団体などに実施を近く勧告する。=2面に関連記事

基準は適正な工期設定や見積もりに当たり、受発注者(下請負人含む)双方が考慮すべき事項の集合体と位置付ける。基準を用いて各主体間で公平公正に最適な工期を設定。結果として、建設業で長時間労働の是正など働き方改革が進み、担い手が安心して活躍できる産業となる。発注者も事業のパートナーが持続可能になることで質の高い建設サービスを享受できる。相互にとって有益な関係を構築する基準でもあるとした。

適用範囲は公共・民間問わず建設工事に関わるすべての受発注者。期間を工事の着工から竣工までとする。公共工事の場合は発注者が工期を設定。民間工事の場合は発注者が受注者に希望を伝達し、受注者の提案を受け、双方合意の上で工期を決める。受注者が施工段階より前に関与し、受発注者双方の合意で決定する場合もある。

改正労働基準法に基づく罰則付きの時間外労働の上限規制が、2024年度から建設業に適用される。発注者の果たすべき責務として、建設業への時間外労働の上限規制適用に向けた環境整備に対し協力すると明記。受注者の果たすべき責務にも長時間労働や週休2日の確保が困難な工事を前提とする著しく短い工期とならないよう、受発注者間や元下間で適正な工期で請負契約を締結するとした。

建設業の働き方改革を推進する必要性を明記。週休2日(4週8休)を確保し定着させるため、建設業界が一丸となって意識改革しなければいけない。価値観の転換は多くの建設業団体が行っている「4週8閉所」の取り組みが有効な手段。維持工事や復興工事など特性や状況によっては、交代勤務制で週休2日(4週8休)を確保することも有効な手段の一つとした。

中央建設業審議会(中建審)が作成した「工期に関する基準」の概要は次の通り。

【第1章 総論】
▽背景
▽建設工事の特徴(多様な関係者の関与、一品受注生産、工期とコストの密接な関係)
▽建設工事の請負契約および工期に関する考え方(公共工事・民間工事に共通する基本的な考え方、公共工事における考え方、下請契約)
▽本基準の趣旨
▽適用範囲
▽工期設定における受発注者の責務

【第2章 工期全般にわたって考慮すべき事項】
▽自然要因(降雨日・降雪日、河川の出水期における作業制限など)
▽休日・法定外労働時間(改正労働基準法に基づく法定外労働時間、建設業の担い手一人一人が週休2日〈4週8休〉を確保)
▽イベント(年末年始、夏季休暇、ゴールデンウイーク、農業用水塔の落水期間など)
▽制約条件(鉄道近接・航空規制など立地に関する制約など)
▽契約方式(設計段階における受注者〈建設業者〉の工期設定への関与、分離発注など)
▽関係者との調整(工事の前に実施する計画の説明会など)
▽行政への申請(新技術や特許公報を指定する場合、その許可が下りるまでに要する時間など)
▽労働・安全衛生(労働安全衛生法など関係法令の順守、安全確保のための十分な工期の設定など)
▽工期変更(当初契約時の工期の施工が困難な場合、工期の延長などを含め適切に契約条件の変更などを受発注者間で協議・合意)
▽その他(施工時期や施工時間、施工法などの規制など)

【第3章 工程別に考慮すべき事項】
▽準備(資機材調達・人材確保、資機材の管理や周辺設備、その他)
▽施工(基礎工事、土工事、躯体工事、シールド工事、設備工事、機器製作期間・搬入時期、仕上げ工事、前面および周辺道路状況の影響、その他)
▽後片付け(完了検査、引き渡し前の後片付け・清掃などの後片付け期間、原型復旧条件)

【第4章 分野別に考慮すべき事項】
▽住宅・不動産分野
▽鉄道分野
▽電力分野
▽ガス分野

【第5章 働き方改革・生産性向上の取り組み】
▽働き方改革に向けた意識改革や事務作業の効率化、工事開始前の事前調整、施工上の工夫、ICT(情報通信技術)ツールの活用などについて、他の工事現場の参考となるものを優良事例として整理

【第6章 その他】
▽著しく短い工期と疑われる場合の対応(駆け込みホットラインの活用)
▽新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた工期などの設定(受発注者間および元下間において協議を行い、必要に応じて適切に契約変更)
▽基準の見直し(本基準の運用状況などを踏まえて、見直しなどの措置を講ずる)。

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