2023/03/09 国交省/価格転嫁要請なくても協議を、公取委調査踏まえ民間発注者団体などに通知

【建設工業新聞  3月 9日 1面記事掲載】

国土交通省は建設業の円滑な価格転嫁に向け、官民の発注者や元請の建設会社など発注側の立場から、受注者・下請との協議の場を積極的に設けるよう働き掛ける。公正取引委員会が昨年末に公表した「独占禁止法上の『優越的地位の乱用』に関する緊急調査」で、価格転嫁が滞っている可能性があるサプライチェーン(供給網)の例として「総合工事業」が挙がったことを踏まえた対応。不動産業などの民間発注者団体や建設業団体、都道府県・政令市に送付した8日付の文書で公取委の見解を周知し適切な対応を呼び掛けた。

文書は不動産・建設経済局建設業課長名で、緊急調査の結果を踏まえ原材料費などの取引価格を反映した適正な請負代金の設定、請負代金の変更に関する規定の適切な設定・運用などを改めて要請する内容。

公取委は調査開始前、優越的地位の乱用として問題になり得る行為の考え方を「独占禁止法Q&A」として公表している。多くの場合で発注者・元請の取引上の立場が強く、受注者・下請から価格転嫁を言い出しにくいことから、取引価格引き上げの要請や申し入れの有無に関係なく協議の場を設けることが適切と強調。そうした対応をせずに取引価格を据え置く行為は独禁法違反の要件に該当する恐れがあると周知した。

緊急調査に応じた総合工事業者の回答を見ると、受注者の立場で「要請した」が53・5%、発注者の立場で「要請された」は87・1%。調査対象業種で「要請した」と「要請された」の開きが最も大きかった。下請やメーカーなどから要請されても、元請の建設会社やデベロッパーなどの不動産取引業者、地方自治体などに要請できていない実態が浮き彫りとなった。

経済界でも調査結果を重く受け止め、適正な取引慣行の徹底を促す動きがある。経団連(十倉雅和会長)など経済3団体は連名で1月、取引適正化の意思表示となる「パートナーシップ構築宣言」の実効性向上に万全を期すための対応を会員らに要請。受注側企業のコスト上昇分について積極的に価格協議に応じ、取引対価へ円滑に反映するよう呼び掛けている。

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