2023/03/31 国交省、建設4団体/賃上げや働き方改革で意見交換、4週8閉所へ課題根深く

【建設工業新聞  3月 31日 2面記事掲載】

斉藤鉄夫国土交通相と建設業主要4団体が29日に行った意見交換会では、建設業界の賃上げや働き方改革などを巡って意見が交わされた。技能労働者の賃金水準を2023年に「おおむね5%」引き上げる官民共通の目標設定には、各団体ともに厳しさをにじませながらも賛同。若年層の担い手確保には4週8閉所の実現が必要との認識で官民が共通するが、困難な課題を指摘する声も根強い。

意見交換会には日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長と押味至一、蓮輪賢治両副会長、全国建設業協会(全建)の奥村太加典会長、全国中小建設業協会(全中建)の土志田領司会長、建設産業専門団体連合会(建専連)の岩田正吾会長らが出席した。

賃上げ目標を巡っては、公共工事設計労務単価の引き上げが実質的な賃金上昇に結び付く好循環を堅持することで認識が一致。宮本日建連会長は「(適切な労務費が)技能者の皆さんにしっかり行き渡るよう、元請として1次下請はもちろん、2次以下の下請の皆さんにもお願いしていく」と話した。

4週8閉所の実現に向け、岩田建専連会長は「猛暑が増しており7、8月は土日完全閉所にできないか」と提案。国交省の吉岡幹夫技監は「(公共工事の)統一閉所の動きは全国に広がっている。みんなで同じ日に休むのは大事」と応じた。

宮本日建連会長は「7、8月を推進月間にするやり方が考えられるのでは」と話し、奥村全建会長は「土日閉所は大賛成だが、個々の工事は商業施設の開業時期などの条件を動かせない現状がある」と実情を吐露。蓮輪副会長は「業界だけでは解決できない」と指摘し、生コン業界など建設工事に関わる関係者との連携が必要との認識を示した。

前日成立した政府の23年度予算で一定規模の公共事業費が確保されたことを受け、各団体会長は口々に感謝を述べた。土志田全中建会長が「10年先を見通せる予算が確保されれば計画的な処遇改善ととも経営の安定に努力することが可能」と訴えるなど、中長期的な予算確保を求める声も多かった。

斉藤国交相は政治家としての発言と断りつつ、国土強靱化基本計画の改定は「役所を離れた政治プロセス」と政治主導を強調。与党で国土強靱化政策の新たな方向性の議論が進んでいることを踏まえ「皆さんの意見を政治の場に伝えてほしい」と呼び掛けた。

当日まとまった「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」の提言への期待感は各団体ともに大きく、宮本日建連会長は受発注者のパートナーシップを構築する方向で今後の議論を主導するよう国交省に要請。奥村全建会長は公正取引委員会が違反行為の実態調査や取り締まりを強化していることを背景に「(受注者との協議に向け)声を掛けてくれる民間発注者が増えた」と最近の変化を口にし、「この流れをさらに進めてもらえれば価格転嫁が進む」と話した。

建設キャリアアップシステム(CCUS)を巡って、斉藤国交相はレベル別の賃金目安を夏ごろに公表し、それに応じた賃金上昇を促す方針を説明。さらに登録者数の伸びに比べて能力評価(レベル判定)の実施状況が「道半ば」との認識を示し、「専門工事業団体を中心に会員企業などへの積極的な広報など一層の協力をお願いする」と述べた。

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