2023/04/20 中建審で議論/発注者にメリット訴え「質の競争」へ転換、消費者理解も論点に

【建設工業新聞  4月 20日 1面記事掲載】

建設業を巡る法制度の整備・改正を見据えた議論のキックオフとなった18日の中央建設業審議会(中建審、大久保哲夫会長)総会では、発注者の立場で今後の展開に期待や要望を寄せる声が相次いだ。資材価格が高騰し技能者の処遇改善も進む中、民間発注者の委員の1人は最終的な消費者や国民の理解を得ていく必要性に言及。低価格競争や短工期を制限し施工の品質で競争する環境になれば、工事価格が安定し「発注者側にもメリットがある」と指摘する学識者もいた。=2面に関連記事

有識者会議「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」が先月公表した提言をベースに、5月から社会資本整備審議会(社整審)産業分科会建設部会と合同設置する基本問題小委員会で詳細な制度検討に入る。

提言では受発注者間の適切なリスク分担につなげるため、請負契約の透明性向上を通じ両者の「協議」を促す方策を打ち出した。発注者の立場で発言した谷澤淳一三菱地所取締役(三菱地所設計社長)は、現状でも契約時に受注者と綿密に協議するプロセスを踏んでいると説明。ただし、着工後の契約金額変更は消費者への転嫁が難しく「事業が止まるか、発注者が負担するかだ」と指摘。こうした事情を考慮し「まずは受発注者間で協議がしやすいような仕組みづくりを議論してほしい」と要望した。

受注者や下請による廉売行為を制限し適切な労務費の行き渡りを制度的に担保する提言の内容も、結果として発注者にコスト増を強いる可能性がある。

佐藤育子東京電力パワーグリッド常務執行役員設備計画担当は「公益的な事業を継続するため消費者、国民に負担いただくケースもある」と前置きした上で、社会全体で資材高騰や労務費上昇の認知度が高まっているタイミングを捉え「建設業を取り巻く状況を啓蒙(けいもう)し、理解を得ていく活動が重要だ」と訴えた。検討会メンバーとして提言作成に携わった西野佐弥香京都大学大学院工学研究科准教授は、工事価格の安定化で確度の高い事業計画策定につながるなどの発注者メリットを強調。「質の競争」への転換が受発注者の対立構造を乗り越える契機となるよう期待した。

建設業関係者も交えた意見交換を受け、長橋和久国土交通省不動産・建設経済局長は「長年の商慣行を変えていかなければならない。それぞれの立場で考え方があり、それをみんなで理解しながら、踏み込んで議論していきたい」と展望を語った。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る