2010/3/16 鳩山政権発足から半年/新成長戦略が試金石に/4月以降、建設会社の倒産懸念も

【建設工業新聞 3月16日 記事掲載】

 歴史的な政権交代による09年9月16日の鳩山内閣発足から半年。鳩山由紀夫首相は「コンクリートから人へ」との政策理念を掲げ、税の使い道を公共事業から子ども手当てなど家計支援や社会保障にシフトさせたものの、景気低迷による税収減の上に財政出動がかさんで借金は拡大。経済の自律的回復の道筋も見いだせずにいる。4月以降、公共工事費の大幅削減で建設会社の倒産を懸念する声も根強く、地域経済や雇用に悪影響を及ぼせば、さらに経済の地盤沈下を招きかねない。


 鳩山政権が編成した10年度予算案では、公共工事費を前年度比で18%も削減したにもかかわらず、子ども手当など政権公約に盛り込んだ施策で歳出は過去最大の92兆円規模に膨張。税収低迷で新規国債発行額は最悪の44兆3030億円に達し、財政再建は一段と遠のいた。


 前原誠司国土交通相は公共事業の抜本見直しへと切り込み、八ツ場ダム(群馬県)の本体工事中止や、高速道路無料化に向けた社会実験・料金制度見直しなどを進めてきたが、地元の反対や財源面の制約もあって思うようには進んでいない。一方、公共事業削減などで経営環境が厳しさを増す建設業への対応では、新分野への転業や転職を後押しすることで雇用を維持。建設会社の海外進出支援や、民間資金を活用したインフラ整備などを打ち出しているが、実現にはさまざまな壁がありそうだ。


 危機的な財政状況下で公共事業の大幅増は望めないものの、子ども手当てなどにどれだけの経済効果が見込めるのかも未知数。鳩山政権の経済運営に対する国民の不安感が最近の内閣支持率低下につながっているとの指摘は多い。国交省は、有識者会議の場で6月までに所管分野の成長戦略を打ち出し、その内容は政府の「新成長戦略」にも反映されるが、国民の将来不安を解消し、明るい展望を持てる経済戦略を打ち出せるかどうか、政権の大きな試金石になる。今夏に参院選を控えているだけに、その内容には国民の厳しい目が注がれることにもなりそうだ。

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