2010/06/25 経審にISO取得を追加 現場代理人の常駐義務緩和の方向へ

 中央建設業審議会の総会が24日開催され、経営事項審査制度と建設工事標準請負契約約款の
改正の方向性について議論が行われた。経審改正では、W点に品質・環境ISO取得を追加する
ことや下請経審の創設などが挙がり、請負契約約款改正については、受注者負担軽減と通信手段の
発達に考慮する形で現場代理人の常駐義務緩和等が議論された。


(1)経審改正について
 経営事項審査の改正について中建審委員、業界団体、都道府県からの意見聴取結果が報告され、
委員・団体から多かった意見として、ダンピング防止のための完工高ウェイトの引き下げ、高齢継続
雇用者の評価、再生企業への減点、除雪の経審評価への異論等が、都道府県からは品質・環境・
労働安全マネジメントシステム取得の評価、障害者雇用等の追加意見が多いことが紹介された。

 この様に審査基準の見直しに関する多様な意見の取り扱いについて3種への分類で議論が進められ、
「当面の見直し項目」として以下3点の方向案が示された。

①完成工事高
 H20改正経審時に約700点だったX1平均点が、建設投資額の減少見通しによる試算で約683点に
なると予想されるが、これは建設企業の自助努力では解決できない他律的な要因であり、X1評点は
全体に17点底上げを図りたい。

②技術力
a.現在、審査基準日において雇用期間を定めずに雇用されていれば評価対象とされているが、
  技術者の名義借り等の不正が行われやすく、今後は基準日において3ヶ月以上の継続雇用
  実績を求めたい。
b.高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度対象者については、雇用期間が限定されていても
  評価対象に含めたい。

③社会性等
a.地域の下請企業等に多大な負担を強いた再生企業に対しては、W点において
 1)「営業年数」をゼロ年にリセット(-60点)して評価したい。
 2)上記1)に加えて、営業年数が満点の35年未満でリセットでの減点が不足した場合に、
   再生期間中は不足分を追加で減点することも検討したい。
 3)基準見直し後に法的再生手続きを行う企業から対象としたい。
b.W点の追加項目として以下の項目を検討したい。但し、W点のウェイトが過大とならぬよう
  全体のバランスを考慮したい。
 1)地域防災への備えの観点から建設機械の保有状況を評価したい。但し、過剰な固定資産
   保有を強いることがない程度に設定したい。
 2)ISO9000・14000シリーズの取得について、多くの都道府県で主観点評価されており、客観的
   事実認定も可能なことから評価に加えたい。経審に追加することで発注機関毎の審査事務の
   重複・負担軽減も可能となる。
 3)その他
  ・除雪委託契約の状況について
  ・労働安全衛生マネジメントシステム(COHSMS・OHSAS)の取得の状況について
  ・高齢者雇用・障害者雇用・若年者雇用の状況について

 この他「継続検討課題」として元請が下請を選定する場合の企業評価に用いる「下請経審」の
創設等が挙げられた。

(2)建設工事標準請負契約約款について
 建設工事標準請負契約約款については以下5点の方向性が示された。

①契約当事者間の対等性の確保
a.第三者の活用など当事者間協議ルールを見直し、公共約款・民間約款・下請約款共に、
  受発注者間の協議段階から公正・中立な第三者(調停人)を活用したらどうか。
b.監督員の失火による火災など発注者に帰責事由がある場合の工期延長に対して発注者
  負担を明記してはどうか。
c.建設工事における代金支払い方法
 1)個人が発注者となる場合、契約成立時に1割、部分払い1回目に3割、2回目に3割、
   引き渡し時に3割としたらどうか。
 2)民間工事において、2~3ヶ月毎の出来高払いを原則化したらどうか。
d.「甲」「乙」の呼称を「発注者」「請負者」に見直したらどうか。
e.下請契約約款において、例えば最終段階を受け持つ設備工事などに負担がいかぬよう、
  下請負人にも工期を明確化したらどうか。
f.民間約款においても、工事中止・工期変更毎の通知を行うことにしたらどうか。

②現場代理人の常駐義務
 主任技術者の常駐義務条件も考慮して、2,500万円未満の工事で発注機関が同一で近接
している等の条件が整えば、現場代理人の常駐義務を緩和したらどうか。

③反社会的勢力の排除条項
 受注者が暴力団員又はこれに準ずる者と認められるときは、契約を解除することが出来る旨の
規定を追加してはどうか。

④旧四会約款との関係
 民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款と、中建審が作成する民間建設工事標準請負
契約約款(甲)との整合を図ってはどうか。

⑤法令・制度改正事項の反映等
a.発注者の承諾があっても共同住宅の新築時は一括下請負が出来ない旨を明確化したら
  どうか。
b.特定住宅瑕疵担保履行法の資力確保措置の内容を契約書に記載させたらどうか。
c.地域建設業経営強化融資制度の活用促進。
d.中間前金払制度の活用促進。


 以上の事務局案に対して、清原三鷹市長や大森弁護士等をはじめとする多くの委員から
積極的に意見が出されたが、追加項目案を否定するような意見は殆どなく、類似の事例や
追加意見等が多かった。

 次回の審議会は7月下旬に開催され、意見のとりまとめや改正の方向性が更に明確化される
予定。

(報告:株式会社ワイズ

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