2010/09/07 補助金の一括交付金化/財源カットと知事ら反発/三位一体改革の「失敗」背景

【建設工業新聞 9月 7日 記事掲載】

 「ひも付き補助金」を廃止して一括交付金化すれば、相当な地方財源が生じる-。14日の民主党代表選に立候補している小沢一郎前幹事長が先週、菅直人首相との効果討論会などで掲げたこうした主張に、全国の知事から、地方自治体の財源が大幅にカットされかねないとして一斉に反発の声が上がっている。
 
 
 飯泉嘉門徳島県知事は6日の定例記者会見で、「(使い道を自治体の)自由度100%にしたから3割カットしてもいいとはならない」と発言。「徳島では(交付金を)使い切れていて、3割カットされたら3割財源がなくなるだけで、はっきり言って困る」と述べた。神田真秋愛知県知事も同日の記者会見で、「一括交付金で3割、4割も費用が浮くと言うなら、地方から財源を取るようなことになるので最も危険視している」と述べ、小沢氏の考え方をけん制した。
 
 
 小沢氏が主張するように、一括交付金化しても財源が確保できないとすれば、結果的に地方財源の総額が減らされるだけになる可能性がある。上田清司埼玉県知事は3日に記者団の質問に答え、「一括すれば事務コストは減るが、何兆円という金額が動くという雰囲気はない」と明言した。ひも付き補助金約20兆円のうち、15兆円は社会保障費として使途が決まっており、「残りの4兆~5兆円のうち、事務コストを減らせたとしても、総額はそんなに変わらない」(上田知事)という見方だ。
 
 
 吉村美栄子山形県知事も6日の定例会見で、「一括交付金化そのものは悪くないが、(補助金の)社会保障関係費用のような固定的なところが自由裁量で、となるのはどうなのか」と疑問を呈し、「全体的な額が減らされることを懸念している」と述べた。村井嘉浩宮城県知事も同日の会見で、「補助金一括交付による3割削減は信じられない」と強調し、「消費増税なしでマニフェスト(政権公約)を実現するには相当な歳出削減が要るが、その痛みを地方に投げ掛けるのは無責任」と切り捨てた。全国の知事が一括交付金化によるマニフェスト財源確保に反発する背景には、かつての国と地方の「三位一体改革」で、地方交付税の大幅削減などにより、地方財政が危機的状況に陥ったこともあるようだ。

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