2010/09/21 国交相交代、前原路線継承されるか/公共事業見直しや成長戦略/まずは動向注視

【建設工業新聞 9月 21日 記事掲載】

 菅改造内閣で外相に転じた前原誠司・前国土交通相。昨年の政権交代で国交相に就任してからの1年間に、前原氏は八ツ場ダム(群馬県)の建設中止方針に代表される大胆な公共事業の見直しに加え、所管分野の成長戦略の策定といった政策に取り組んだ。前原体制によって国土交通政策が大きく方向転換されたのは間違いないが、これまでにない公共事業の大幅な削減は、建設業界に暗い影も落とした。後任の国交相には、国交副大臣として前原氏を支えてきた馬淵澄夫氏が就いたが、前原路線は継承されるのか-。
 
 
 国交相として前原氏は、人口減少と少子高齢化が進み、ばく大な財政赤字を抱える中で税の使い道を変える必要があると一貫して主張。「選択と集中」による公共事業の大胆な見直しに取り組んできた。就任早々、八ツ場ダムの建設中止を明言。「できるだけダムに頼らない治水」を目指して有識者会議を立ち上げ、今後、個別ダムの再検証に入るという段階までこぎ着けた。
 
 
 17日、国交相として最後の定例記者会見に臨んだ前原氏は、自ら打ち出した八ツ場ダムの建設中止方針について、「地元の皆様に多大な迷惑をかけていることには、あらためておわびしたい」とする一方、方針表明後、地元住民との生活再建などに関する話し合いが進まないことについて、「残念ではあるが仕方がないことだ」と述べた。前原氏は、ダム以外にも国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の廃止や、高速道路無料化の社会実験、国際競争力を持つハブ港湾機能を確保するため国際コンテナ戦略港湾の選定などを進めてきた。航空分野では経営破たんした日本航空の再生に力を注ぐとともに、新たな空港は基本的に作らないという方針を明確化作成した。
 
 
 馬淵氏はかつて建設会社に勤務した経験があり、前原氏に比べると建設産業の実態や本質をより熟知しているとみられる。前原路線とどう折り合いを付け、国土交通政策の方向転換を進めていくのか、その手腕に注目が集まっている。建設業界からは、馬淵氏について「前原国交相の時の政務三役の中では公共事業への姿勢が最も厳しかった」といった指摘もあり、まずは動向を注視することになりそうだ。

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