2010/09/28 八ツ場ダム検証がスタート/国交省、関係自治体と検討組織を立ち上げ

【建設工業新聞 9月 28日 記事掲載】

 国土交通省と自治体による八ツ場ダム(群馬県)の検証がいよいよスタートする。関東地方整備局と東京、群馬、埼玉、栃木、茨城、千葉の1都5県らによる検討組織が立ち上がり、10月1日に幹事会が開かれることになった。同省の有識者会議がまとめた評価基準に沿って検証作業を進め、事業の是非を判断する。八ツ場ダムは民主党が政権公約(マニフェスト)で掲げた「コンクリートから人へ」の象徴的事業だけに、検証の行方は同省が推進する「できるだけダムに頼らない治水」の試金石となりそうだ。
 
 
 八ツ場ダムについては、昨年9月に政権交代して間もなく、前原誠司前国交相が建設中止の方針を表明。一方で早期完成を求める地元の声もあり、全国のほかのダムと同様、「予断なく検証作業を進める」ことになっていた。検証は、同省が設置した「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」の中間取りまとめに沿って行われる。具体的には、「関係自治体から成る検討の場を設置し、相互の立場を理解しつつ、検討内容の認識を深め検討を進める」とされ、関係1都5県は国交省に対し検討組織の早期立ち上げを求めていた。
 
 
 国交省は関係自治体との調整が付いたことから、10月1日に検討組織の幹事会を開いて検証作業に着手することにした。検討組織は関東地方整備局が主体となり、関係1都5県のほか、古河、足利、館林、藤岡、加須、野田の6市、長野原、東吾妻の2町および江戸川区で構成。学識者や関係住民、自治体首長、関係利水者の意見も聞きながら、検証作業を進めることになる。
 
 
 有識者会議が中間取りまとめで示した評価項目は、「安全度」「コスト」「実現性」「持続性」「柔軟性」「地域社会への影響」「環境への影響」「流水の正常な機能の維持への影響」の八つ。現行の河川整備計画の目標と同程度の安全度の確保を基本に、ダム以外の治水対策案とダム案を比較検討することになる。八ツ場ダムの検証結果を出す時期について、馬淵澄夫国交相は24日の定例会見で、「技術的検討もあるし、地域住民の方々の意見聴取も含め多角的に行うので、私どもが時期を区切るということはない」と明言を避けている。

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