2012/09/28 国交省『金融円滑化法期限切れ及び社会保険下請指導ガイドライン説明会』に200名が参加
国土交通省及び建設業振興基金の共催で、「金融円滑化法の期限切れに関するセミナー」と「社会保険
の加入に関する下請指導ガイドラインについての説明会」が開催され、約200名が参加した。
第1部は金融庁監督局総務課の山本庸介氏が金融円滑化法と期限切れ後の対応策等について解説を
行った。
金融庁 山本庸介氏
中小企業金融円滑化法は当初1年4ヶ月ほどの時限立法だったが、2度の延長を受けて、いよいよ来年
3月末が最終期限となった。
貸付条件の変更が9割を超えるなど取り組みは延長によって定着しているが、一方で貸付条件の変更を
受けながら経営改善計画が策定されていない中小企業が存在するなど問題も指摘されている。
金融規律の確保のための施策を講じる一方で、金融機関によるコンサルティング機能を促すことで、
中小企業に対する経営改善支援を推し進めていく必要がある。正常先、要注意先(その他要注意先)なら
貸付可能であり、通常、要管理先以下は不良債権と判断されるが、貸出条件緩和債権の見直しにより、
経営改善計画の一定期限内策定により、不良債権に該当する区分であっても不良債権から外れることに
なり、貸出条件が緩和されることになる。
貸出条件緩和債権の要件弾力化 説明図
また「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」として、困難度に応じて企業再生支援機構及び
中小企業再生支援協議会が設立されており、持続可能性の見極めにより経営再建計画の策定から自主的
且つ円滑な廃業支援までを支援している。
建設業界での事業再生事例としては、建設会社4社の好収益部門を1つにまとめて地区大手建設業者
支援の下で新会社を設立し、一方で不採算部門をまとめて金融機関への債権放棄を求め清算・解散させた
事例があると説明した。
中小企業再生支援協議会との連携による事業再生事例(建設業) 説明図
期限切れを約半年後に控え、現在はあまり表だった混乱は見られないが、同法を利用した貸付条件の
変更等が既に290万件近い実行数であることを考えると、今後、金融機関や関連士業などを中心にして、
建設業者に対する期限切れ後の対策・対応が重要となってくるものと思われる。
条件変更の申し出に対する金融機関の対応状況 説明図
◇参考資料(PDFファイル)
第2部は国土交通省建設市場整備課の長福知宏氏と山野美鈴氏により解説が行われた。
長福知宏氏 山野美鈴氏
説明では昨年度の公共工事労務費調査の結果から社会保険加入率が元請78%、1次下請55%、2次
44%だとし、こういった処遇の低さが若年入職者減少の一因となり技能の継承が困難になっていると
した。
また適正に法定福利費を計上する企業ほど受注競争では不利だという不公正な競争環境を整備する
ために、今回の社会保険未加入対策を行うとした。
建設業における労働保険、社会保険の加入義務等 一覧表(PDFファイル)
既に7月からは経営事項審査における減点幅が60点から120点と2倍に増えた。更に11月1日からは
許可更新時や経審申請時に加入状況を確認・指導するだけでなく、別途立ち入り検査を実施する。
立ち入り検査では、加入状況のみならず元請から下請への指導状況についても確認、指導することに
なる。指導に従わない企業については厚生労働省の担当部局へ通報し、それでも従わない場合には指示
処分、監督処分されることになる。現在、監督処分の基準について変更案が作成され10月4日まで
パブリックコメント(国土交通省HP)を求めているところである。
また法定福利費を確保するために、7月23日(国土交通省HP PDFファイル)及び、9月13日(国土
交通省HP PDFファイル)付けで元請・発注者団体に通知を出した。
今後は、法定福利費が明記された見積書や契約書が交わされ、必要な経費を見込んだ発注が行われる
ことになる。10月31日に開催予定の第2回推進協議会には法定福利費を明示した形の標準見積書(案)
が提示される予定である。
説明では今年の11月から100%実施という訳ではなく、平成29年度以降は社会保険未加入業者は
排除されることになるとされた。施工体制台帳や再下請通知書の書式や記載例などが紹介されたが、
過去の経緯を踏まえると、直轄工事等では初年度からしっかりとした対応が求められることになり
そうだ。
◇参考資料(国土交通省HP PDFファイル)
今回は短期間のうちに募集定員いっぱいとなり、特に第2部はほぼ満室の受講状況であったこと
からも、社会保険未加入問題に対する建設業者の関心の高さが伺えた。
説明会の状況はUSTREAMでも配信され、今後は業界団体等を等して全国で説明会が開催される
予定である。