2014/1/8 予備自衛官の活用注目/特殊技能習得で即戦力に期待/担い手確保に国交省も関心

【建設工業新聞 1月 8日 1面記事掲載】

人材不足が深刻化する建設業界で、「予備自衛官」の活用が注目されている。元自衛官などが普段は企業に属しながら有事の招集に応じるのが「予備自衛官等制度」。予備自衛官は数万人いるが、建設業界で雇用されているのは1割に満たない。自衛隊在籍時に大型車両の運転免許や玉掛けなど建設に関連する特殊技能を習得しているだけに、即戦力となる期待が高い。国土交通省も担い手確保の有効な手段になると関心を寄せている。

同制度は、企業に所属する元自衛官などが、年間数日の教育訓練を受け、有事の招集に応じるもので、常備自衛官だけでは賄いきれない防衛力の確保策として60年の歴史を持つ。有事の際の役割や招集区分などに応じて、▽予備自衛官(13年3月末現在で3万2397人)▽即応予備自衛官(5387人)▽予備自衛官補(2935人)-の三つのカテゴリーがある。防衛省によると、建設業界での雇用割合は、予備自衛官が4・5%、即応予備自衛官が約10%、予備自衛官補が1・8%。サービス業や製造業などと比べると低いが、建設現場の作業などは自衛官の任務と共通する部分も多いため、同省は「建設業界は再就職先として有望」(予備自衛官室)とみている。

雇用する建設会社にとっても、建設関連の技能・資格を持つ元自衛官の存在は魅力がある。地元の駐屯地の紹介で、5年ほど前から予備自衛官を継続的に雇用しているコンクリート圧送業のつくばコンクリート工事(茨城県つくば市)は現在、20代の元自衛官5人を施工現場に配属している。同社の黒田敦夫副社長は、「通常、一通りの仕事を覚えるのに3年かかるが、予備自衛官なら1年ほどで済む」と即戦力として評価。厳しい訓練に耐えた人材は、「体力があり、仕事に対してもまじめ」と太鼓判を押す。大手ゼネコンの下請として首都圏の大型工事に携わることも多い同社では、「人手不足に対応するため、しばらくは予備自衛官を頼るしかない」(黒田副社長)としており、今春も2人の雇用を計画している。

予備自衛官の活用について建設産業専門団体連合会(建専連)の才賀清二郎会長は昨年12月、太田昭宏国交相と懇談した際、女性や元受刑者などと並び、人材不足緩和の有効な手だてになると訴えた。国交省も若い担い手の確保・育成が課題となる中、「業界のニーズを踏まえた一つの選択肢になり得る。業界内でも十分に浸透していない制度の周知を図っていきたい」(労働資材対策室)としている。

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