2014/5/8 建設業の雇用-需給ギャップ拡大に拍車/有効求人倍率上昇、建設関連職種が突出

【建設工業新聞 5月 8日 1面記事掲載】

厚生労働省が2日に発表した13年度の平均有効求人倍率。職種別で見ると、建設関連業種の上昇が際立った。中でも「建設躯体工事」は、比較可能な00年度以降では最高値を記録した。企業の求人件数である「有効求人数」は、リーマンショック後の09年度を底に増加が続いているが、逆に職を探している「有効求職者数」は同年度から減少の一途。景気回復や公共投資増加の影響が顕在化した昨年以降は、雇用の需給ギャップ拡大に拍車が掛かっている。

全職種の有効求人倍率は13年度平均で0・97倍と前年度より0・15ポイント上がった。この伸びを大きく上回っているのが建設関連職種だ。6・36倍と前年度比1・52ポイント上昇した型枠、とび、鉄筋工の躯体工事を筆頭に、建築の専門工事業が中心の「建設」が0・64ポイント高い2・54倍、「土木」が0・68ポイント上昇の2・31倍、土木・建築の設計、工事監督、測量の「建築・土木・測量技術者」が1・52ポイント上がって3・40倍だった。

月間ベースでみると、躯体工事の有効求人倍率は10年4月に1・15倍まで低下したが、東日本大震災直後に反転し、昨年10月には7倍を突破。直近の14年3月(7・26倍)まで6カ月連続で7倍を超えている。景気回復に伴う民間工事の増加や公共投資の拡大に加え、「2020年東京五輪決定の影響もある」と厚労省担当者はみる。

建設工事は経験者や資格を持つ人が歓迎される傾向があるが、そうした人は一朝一夕には増えない。「未経験・無資格の人は事務職などに向かい、躯体工事の求人が増えても求職者は増えない」(厚労省)。厚労省の担当者は「今後、求人はより増える」とし、ミスマッチを埋める対策として入職前の職業訓練などの「対策に取り組んでいく」と話す。

建設業界の魅力向上も求められる。躯体工事は技能に加え、体力も必要なため若者の入職が期待されるが、建設業の仕事は「きつい」「汚い」「危険」とされて若者には敬遠されがち。しかも、社会保険未加入業者も他の職種に比べて多いなど、不安定な就労環境も課題とされる。少子高齢化が一層進めば、産業間での人材獲得競争が一段と激化することは必至だ。

国土交通省は、官民挙げた取り組みとして社会保険への加入促進を図るなど、若者が安心して建設業に就職しようと考える土壌づくりを進める。一方、処遇や仕事への誇りを含めて建設業が将来を託すのにふさわしい産業だと認識してもらえるよう、官民挙げた担い手確保策にも取り組んでいる。不足する人材への投資を確実なものとするには建設投資の安定的な確保も前提となる。有効求人倍率が示す企業の求人意欲と求職者の溝を埋めるためには、さまざまな手だてを駆使する必要がありそうだ。

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