2015/07/08 改正官公需法成立/「創業10年未満」企業どう扱う/実績なしも工事受注可能?

【建設工業新聞 7月 8日 1面記事掲載】

ベンチャー企業の受注促進を目的にした改正官公需法が、7日の衆院本会議で可決、成立した。政府は官公需法に基づいて毎年度、「中小企業者に関する国等の契約の方針」を決めており、ベンチャー企業として法律に明記された「創業10年未満」の中小企業者との契約をどう扱うかが今後の焦点。公共工事では「過去の実績」が入札参加要件として重視されることも多く、「実績を持たない企業が競争で有利になれば、工事の品質が確保できなくなるのでは」と懸念する声もある。改正法の施行日は今後、政令で定める。今回の法改正は、ベンチャー企業を含めた中小企業者の受注機会の増大を図るのが狙いだ。創業10年未満の中小企業者を「新規中小企業者」と定義し、国などの契約の相手方として活用するよう「配慮しなければならない」と条文に明記した。

物品・役務の調達とともに工事も対象になる。受注促進の一環で、官公需に関心のある新規中小企業者の情報を中小企業基盤整備機構が収集し、各省庁などに提供する。政府が官公需法に基づいて毎年度定めている契約方針には従来、政府全体と各省庁別、さらに国の関連機関合計の中小企業との契約目標値が設定されていた。改正法では、「基本方針」として全体の契約目標や受注機会増大のための措置を明記して閣議決定することに改めた。各省庁などは基本方針に則して、それぞれの契約方針を策定する。目標値などは今後、政府内で調整の上で定められることになる。焦点となる新規中小企業者の取り扱いについて宮沢洋一経済産業相は国会審議で、「官公需総額約8兆円のうち、新規中小企業者との契約は1%程度と推計している。例えば3年程度で倍増するといった目標を考えていきたい」(4月16日の参院経済産業委員会)と答弁しており、目標設定もこうした方向で調整されることになるとみられる。

地域に根差して活動を展開する建設業界には、新規中小企業者の公共事業への参入を促進することを疑問視する声も多く、「受注拡大の促進には慎重な姿勢でお願いしたい」と要望していた。建設工事は、物品購入と違って単品・現地生産という性格を持つ。そのため、公共工事の品質を担保する方策として、入札時に競争参加者の技術的能力を「工事の経験」を含めて審査するよう公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)で規定している。加えて、本・支店、営業所所在地などの地域要件が付く工事も多い。国土交通省の直轄工事では、自治体工事の実績評価や実績の少ない優良企業の参入促進などの試行を通じ、新規業者も入札に参加でき、受注が特定の企業に偏ることのないよう取り組んでいる。新規中小企業者の活用促進には、こうした事例も踏まえ、施工品質の確保や市場のバランスも十分に考慮した対応が求められそうだ。

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