2015/10/07 国交省/多様な入札契約を全国展開/ECIや大手・地元JVなど、16年度に指針

【建設工業新聞 10月 7日 1面記事掲載】

国土交通省は、多様な入札契約方式の全国展開に乗りだす。地元企業を活用するCM(コンストラクション・マネジメント)や、施工者が設計段階から関与するECI(アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式に加え、大手から地元企業への技術力の移転を図るJV方式の普及拡大を念頭に置く。進行中のモデル事業の成果を踏まえ、16年度に自治体向けのガイドラインを作成。相談窓口も設け、新方式に取り組む発注者を支援する。

多様な入札契約方式を全国展開するのは、発注能力が不足する小規模な地方自治体に対する支援を強化するとともに、地域建設産業の担い手育成につなげるのが狙いだ。

例えば、CM方式なら、CMr(コンストラクション・マネジャー)の専門性を生かし地元企業を活用。ECIでは、施工者の技術力を設計段階から引き出し、工期短縮やコストの圧縮を図るほか、難しいプロジェクトでも手戻りを防ぐ。

大手企業と地元企業がJVをより柔軟な形で組成する方式も候補の一つ。自治体の中には、JVのスポンサーとなる大手企業を入札で絞った後、スポンサーとなった大手企業がJV構成員を地元企業から選ぶ方式を運用している例がある。こうした先行事例を担い手育成の観点から全国に広げることを想定している。

地元企業にとっては、大手の技術力や経営ノウハウを吸収できるほか、下請ではなくJVの構成員として工事を手掛けることで適正利潤を確保できる。スポンサーの大手企業にとっても地元企業を選びやすくなる。

設計者と施工者が組む設計・施工一体型JVの入札契約方式も普及に向けた準備を進めたい考えだ。

15年度は、多様な入札契約方式のモデル事業として5件を選定しており、これらの実績などを基に事例集を作成するほか、自治体向けの報告会を地域ブロックごとに開催する。その上で16年度は、ガイドラインを作成するほか、モデル事業でも新たな入札契約方式の導入を支援していく。

工事の性格や地域の実情に応じ、多様な入札契約方式から選択・組み合わせを行うことは、15年度から本格適用された改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用指針に発注者の努力義務として盛り込まれている。一方、技術職員の不足が懸念される小規模な自治体などが、インフラの老朽化対策などで過去に経験のない大規模工事を行う際には、従来の入札契約方式では対応できない恐れもある。

災害対応やインフラのメンテナンスを手掛け、「地域の守り手」となる担い手の確保・育成は、9月に閣議決定した社会資本整備重点計画に盛り込まれ、政府全体の方針として政策的な重要度が一段と高まった。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る