2015/12/18 15年度補正予算案/地域業界から失望の声/工事量増えず、先行き懸念

【建設工業新聞 12月 18日 1面記事掲載】

政府が18日に閣議決定する15年度補正予算案のうち、公共工事の量を左右する国土交通省関係分の予算額が国費ベースで前年度補正予算より約13%少ない約4700億円にとどまる方向となったことに、地域建設業界が危機感を強めている。工事量が前年度に比べ大幅に減少し、多くの地域建設業者が窮状を訴えてきたためだ。全国建設業協会(全建)のように大型補正予算の早期編成を求める団体が多かっただけに、失望の声と同時に経営の先行きを不安視する見方が広がっている。

補正予算案のうち国交省関係は、9月の関東・東北豪雨の災害復旧をはじめ、被災したインフラの復旧や防災対策に多くが割り当てられる見通し。公共事業は民間投資や自治体発注の工事の誘発効果が期待されるものの、今回の予算額では工事量を全国で増やすのは難しいとの見方が強い。

公共工事の量は本年度、地域間格差が広がり、請負金額ベースで半減している地域もある。全建が公共工事前払金保証事業会社の統計から算出した4~11月の請負金額ベースの工事量によると、国の機関からの請負金額が前年度の水準を下回ったのが39道府県に達する。このうち32府県は減少率が2桁を超え、京都、宮崎は50%を超える急減状態だ。

15年度補正予算案の概要が判明するにつれ、地域建設業者や業界団体からは厳しい意見が出てきている。全建の本部には各地の業者から「大型を求めていただけに失望した」との声が相次いでいる。ある団体の幹部は「会員の手持ち工事が少なく、(工事が減るとされる)2020年東京五輪後よりも五輪前が心配だ」と会員の経営環境の悪化を心配する。

大企業を中心に全産業ベースでは収益が改善している企業が多いことを念頭に、「この状況下で建設業で倒産が増えるなら政治の責任だ」(団体首脳)との声も上がる。

地域の業界団体の中には、与党の16年度税制改正大綱で、17年4月の消費増税に伴う軽減税率の導入に必要な財源の検討が先送りされたことで、「公共事業費が財源にされ、さらに減りかねない」と懸念する首脳もいる。公共事業の必要性を強調してきた業者・団体ほど失望感と危機感を募らせており、編成作業が本格化している16年度当初予算で公共事業費の増額を求める地域の声がひときわ大きくなりそうだ。

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