2016/01/29 国交省/民間工事設計変更に指針/受発注者の理解で円滑施工

【建設工業新聞 1月 29日 1面記事掲載】

国土交通省は、民間工事で設計変更を行う場合の協議の進め方などを示した指針をつくる。27日に開いた中央建設業審議(中建審、国交相の諮問機関)と社会資本整備審議会(社整審、同)合同の基本問題小委員会で国交省は、変更の要否を判断する場合の協議の進め方や判断事例が明確となっていない実態を指摘。受発注者双方が設計変更が必要なケースや協議の進め方などを十分に理解しておけば、円滑な施工が期待できるとした。こうした論点に沿って具体策の議論を深めてもらう。

建設工事では、着工後のさまざまな状況変化で、契約時に定めた工期や費用が変動することが少なくない。

例えば、設計図書に示された管路が所定の空間に入らないことからルート変更が生じたり、既存の地下埋設物の位置が想定と異なることで設置予定の構造物と干渉しないよう再設計を余儀なくされたりする。杭の打設では、想定深度で支持地盤に到達しなかったため、再設計と既製杭の再注文が必要になることもある。近隣住民から振動や騒音に対するクレームが入り、作業時間を短縮せざるを得なくなるケースもある。

こうした各種リスクに円滑に対応するには、あらかじめ関係当事者間で情報を共有しておき、それぞれの役割や責任の分担、協議のルールを明確化することが必要となる。合意された責任分担を契約書などに位置付けておけば、紛争の発生を防止する効果が期待できる。

昨年発覚した基礎杭工事の施工データ流用問題を受けて、国交省の有識者委員会が昨年末にまとめた再発防止策でも、当初設計通りに施工することが妥当でないと考えられる場合にも工期変更などの対処方法が明確になっていないとして、そのためのルールの必要性が指摘されていた。

今回の基本問題小委に先立ち国交省は、大手ゼネコンの担当者に事前ヒアリングを実施。その中で、発注者の依頼を受けて設計者が決定する地盤調査の内容について、追加調査が必要となるような場合は「発注者に必ず調査を申し入れている」ことなどが確認されたという。

11年8月に国交省が作成した「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」では、追加工事や設計変更を行う場合、それらに伴う費用を受注者に一方的に負担させることは、不当に低い請負代金を禁止する建設業法の規定に抵触する恐れがあるとしている。ただ、直轄工事に適用している設計変更ガイドラインのように、設計変更の要否判断や協議の進め方までは民間工事では定まっていないのが実態だ。

国交省の谷脇暁土地・建設産業局長は、受発注者ガイドラインが民間工事の発注者と元請間の契約に「活用されていない」と指摘。「現場で機能するものを考えられないか」との視点からガイドラインの作り方や内容について再検証する考えを示している。

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