2016/05/23 国交省/2次下請以下も排除検討/社保未加入対策、元請の指導責任を強化

【建設工業新聞 5月 23日 1面記事掲載】

国土交通省は、建設業の社会保険未加入対策を強化する。加入率の低い2次以下の下請業者に対する取り組みが柱。未加入業者を直轄工事から排除する対策を、従来の元請・1次下請業者から2次下請以下にも広げる検討に入るとともに、1次・2次下請間で法定福利費を内訳明示した見積書の提出を見積もり条件にするよう6月にも指針を改定する。下請業者の加入を指導する元請業者の責任を強化する検討も始める。

20日に東京都内で国交省と84の関係団体が参画する「社会保険未加入対策推進協議会」(会長・蟹澤宏剛芝浦工業大教授)が開かれ、16年度の未加入対策案が示された。

国交省は社会保険加入の目標として「17年度をめどに許可業者単位で100%、労働者単位で製造業並み」を設定している。15年10月の公共事業労務費調査によると、3社会保険(雇用・健康・厚生年金)の加入率は企業単位で95%(11年10月調査84%)、労働者単位で72%(57%)と着実に上昇しているが、2次以下の下請や都市部の加入率は依然低い。目標期限まで1年を切り、「一番難しいところに手を付けないとこの先の浸透は難しい」(蟹澤会長)として、2次以下の取り組みを柱とする未加入対策を講じることにした。

国交省は14年8月に社会保険未加入の元請業者を、15年8月には未加入のすべての1次下請業者を直轄工事から排除した。この措置を2次以下の未加入業者への対策として17年4月から適用することを検討する。

「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を6月にも改定し、1次・2次下請間で内訳明示の見積書の提出を見積もり条件に明示することを盛り込む。2次以下の下請業者を対象に内訳明示の見積書の作成方法に関する研修会を7月から全国で順次開催する。

元請業者に対しては、下請業者への加入指導に関する責任の強化を検討。強化策の周知期間を確保した上で17年4月から適用する予定だ。内訳明示の見積書の活用を徹底するため、許可部局が立ち入り検査を実施。元請から下請への活用の働き掛けや、下請から提出された見積書の尊重などの状況を確認し、必要に応じて指導する。

このほか未加入の許可業者を「見える化」。同省のホームページで公開している「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で企業ごとに社会保険の加入状況に関する情報を追加する。地方自治体の発注工事でも未加入業者を排除するよう6月ごろ要請する。

《社保加入対策のスケジュール》
【16年6月ごろ~】
■公共工事での社会保険未加入企業の排除
△地方公共団体の発注工事で未加入企業の排除を図ることを入札契約適正化法に基づき要請
■法定福利費を内訳明示した見積書の活用徹底
△立ち入り検査による見積書の活用徹底
△再下請負にも活用徹底(下請指導ガイドラインの改定)
■加入すべき対象の明確化、周知・啓発の徹底
△未加入労働者の扱いの明確化
△一人親方などの雇用と請負の明確化の徹底に向けた周知
△就労形態に応じ加入すべき適切な保険の周知
■相談体制の強化
△全国社会保険労務士会連合会との連携強化
△社会保険未加入対策に関するQ&Aの充実など既存の相談体制の強化

【16年7月ごろ~】
■法定福利費を内訳明示した見積書に関する周知・啓発
△研修会の開催
△見積書の作成手順の充実(簡易版の作成など)
■社会保険未加入対策に関する説明会を全国で開催

【17年4月~】
■元請企業の下請企業に対する指導責任の強化(検討中)
■公共工事での社会保険未加入企業の排除
△直轄工事で2次以下の対策(検討中)
■「建設業者等企業情報検索システム」に加入状況の情報を追加(準備が整い次第)。

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