2016/06/08 総合評価方式-都道府県、多様な要素を加点/若手・女性や地元業者育成/国交省調査

【建設工業新聞 6月 8日 1面記事掲載】

都道府県が工事発注で行っている総合評価方式の入札で、多様な要素を評価する動きが広がっている。国土交通省が5月に行った調査によると、14年4月以降に新たに導入した評価項目として、25団体が「若手技術者の育成」、6団体が「女性技術者の育成」、4団体が「県内下請業者の活用」を挙げ、担い手確保・育成を意識した評価の導入が目立つ。下請次数を制限する取り組みに加点するなど行き過ぎた重層下請構造の是正に役立てる動きも出てきた。

14年6月施行の改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)には、担い手の中長期的な確保・育成や、多様な入札契約方式の選択・活用が盛り込まれた。国交省は直轄工事の入札で運用する総合評価方式の運用ガイドラインを改定。中長期的な技術者確保などの施策を推進する観点から、評価項目を発注者が多様な要素で適宜設定できるようにした。

国交省は都道府県を対象に14年4月以降に導入した評価項目の調査を実施。25団体(北海道、茨城県、栃木県、神奈川県、島根県、山口県など)が優秀な技術者の確保・育成、次世代への技術の継承などを目的に若手技術者の育成を評価項目に設定していた。企業の女性活躍の取り組みを後押しするため、東京、岐阜、滋賀、徳島、香川、長崎の6都県が女性技術者の育成を評価項目に設けていた。

ある県では工事成績評価30点のうち、30歳未満の技術者を配置すれば15点、35歳未満なら10点、女性で2点、Uターン・Iターン技術者の配置で2点を加点しているという。複数の評価軸を設定し、公共工事の品質確保とともに、担い手を確保・育成する取り組みも出始めている。

県内業者の育成を目的に、すべての1次下請業者または元請業者を県内業者とし、工事のすべてを自ら施工する建設業者を加点評価する仕組みを4団体が取り入れていた。地域社会を維持するため、4団体が災害時などに初期対応可能な建設機械や除雪機械の保有状況を評価。地域の施工業者の確保・育成を目的に地域精通度を評価項目にしているのも2団体あった。

行き過ぎた重層下請構造は間接経費の増加を招き、生産性の低下や労務費へのしわ寄せといった問題が生じる一因になると指摘されている。長崎県では下請を建築工事で3次以内、建築以外の工事で2次以内にすることを誓約すると加点。京都府は自社施工率などを評価して加点する仕組みを導入している。

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