2017/02/09 国交省/業法改正視野に法制度・許可検討開始/WG初会合、民間工事の規律も焦点

【建設工業新聞 2月 9日 1面記事掲載】

国土交通省は建設業法の改正を視野に、関連制度の基本的枠組みの検討に入った。担い手確保や働き方改革、生産性向上などの政策的要請や、多様化・複雑化する建設業の実態を踏まえて論点を提示。適切な施工の確保という業法の目的に重点を置き、民間工事を含め受発注者が備えるべき規律(行為の基準)について踏み込んだ議論を展開する。

建設産業の10年後を見据えて産業政策を議論する有識者会議「建設産業政策会議」の下に設置する三つのワーキンググループ(WG)のうち、請負と許可の制度を検討する「法制度・許可WG」(座長・大森文彦東洋大教授)の初会合を8日に開催。検討事項として▽建設業法などにおける定義▽建設業法の構成、変遷など▽建設産業の態様とプレーヤー▽請負契約とその規律▽許認可制度▽技能労働者の位置付け-の6点を示した。

会合で国交省は、制定から約70年がたつ建設業法について、これからは担い手を“確保”するために働き方や生産性向上を意識した制度設計という視点で検討するとの考え方を表明。現行法に位置付けのない技能労働者について、キャリアパスも意識した制度的位置付けを検討する方針も示した。

現行法では報酬を得て建設工事の完成を目的として締結する契約は、すべて建設工事の請負契約とみなすと規定されているため、コンストラクション・マネジメント(CM)業務にも請負契約が用いられている。国交省は請負契約以外の契約形態(CMなど)の位置付けを今後の論点の一つに挙げた。

政策的要請について発注者が果たすべき役割や、民間工事の規律も検討の視点に列挙。担い手3法(公共工事品質確保促進法、入札契約適正化法、建設業法)で定める発注者の責務を民間工事にも広げることを模索する方向性を示した。

委員からは「建設産業はさまざまなプレーヤーの関連性で成り立っている。建設業法とするのか、建設業等法にするのか。どこまでをターゲットにするか考えなければならない」「『建設業を営む者の資質の向上』『建設工事の請負契約の適正化』という業法の手段は制定当時のもの。今は変化しているものもあるのでは」などの意見が出た。

「公共発注者と比べて民間発注者の規律には欠落がある」との指摘もあり、「民間建築工事について深掘りする必要がある。多様な発注者を類型化し、特徴を分析・研究することが課題」「(工事発注に精通していない)エンドユーザーを意識し、行政が民民間の契約に介入することも求められている」などの見解も示された。

次回は許認可制度と技能労働者の位置付けについて議論する。

《建設業法これからの検討の視点》

■全体的な考え方
△労働力人口が減少し、担い手確保が建設業の重要課題になる中で、建設業従事者の働き方を意識した制度設計
△生産性の向上を意識した制度設計
△建設業への参入の状況が変化し、地域によっては建設業の供給力が不足する場合が生じ得ることへの対応
△請負契約に限らない契約形態の規律
△消費者(エンドユーザー)保護を意識した制度設計
△一定の競争性は確保しつつも競争に付すべきでない要因を加味した制度設計

■業種や業態の違い
△土木と建築の違いなど業態の違いに応じたきめ細かなルール設定
△民間工事における規律

■契約の履行や施工の適正性の確保
△高度で複雑な工事や外注比率の高い工事がある一方で、単なる組み立て作業となる工事もあるなど建設工事の多様化への対応
△建設工事におけるICT化の進展に対応した施工管理
△フロントローディング、BIM、CIMなどが広がる中、発注者、設計者、施工者の責任関係
△施工に関する事業者の責任と技術者の責任
△技能労働者のキャリアパスも意識した制度的な位置付け
△建設業者のコンプライアンスの取り組みの推進

■発注者の位置付け
△発注者の能力差、多様性への対応
△体制の弱い発注者への対応
△担い手の確保や働き方、下請取引の適正化などの政策的要請について発注者にも果たしてもらうべき役割
△受発注者間の請負契約の適正化に向けて十分に機能する仕組み
△建築生産における発注者の役割を意識した制度設計

■規定の射程
△建設工事に関わる請負契約以外の契約形態(CMなど)の位置付け
△プレキャスト化など施工形態の変化(建設業者間にとどまらない、請負だけでは律しきれない取引の多様化)への対応
△発注者、受注者以外のプレーヤーの位置付け
△エンドユーザーの位置付け
△小規模な工事の実態を踏まえた対応

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