2019/12/12 国交省/一人親方ヒアリング結果/書面契約「なし」、安全衛生経費「支払われず」

【建設工業新聞 12月 11日 2面記事掲載】

国土交通省は建設現場で働く一人親方へのヒアリング結果をまとめた。元請または注文者との契約では「書面による契約はなし。金額だけ口頭で伝えられる」などの声が寄せられた。安全衛生経費については「請求したが支払われなかった」「下請案件では請求しづらい」といった厳しい実情が浮き彫りとなった。

国交省は全国建設労働組合総連合(全建総連)の協力を得て、9月24日と10月10日の2日間、首都圏で働く20人(30~60歳代)の一人親方を対象にヒアリングを実施。職種は大工、建築塗装、内装、型枠工など。ゼネコンやハウスメーカー、地元工務店などが主な働き先となっている。

元請に安全衛生経費を請求しても受け入れられず、「むしろ安全会費を差し引かれる。さらにヘルメット代や業務処理用タブレット代も引かれる」などの意見があり、「消費税のように安全衛生経費の割合などを数値で明確に示してほしい」といった要望も寄せられた。

安全衛生対策に関する器具や費用については「ヘルメットなども使用期限があるにもかかわらず、古いものを使い続けているのが現状だ」「元請が支給していたヘルメットやマスクが、今では半値で買い取れといった対応だ」といった実情が分かった。

労働災害防止に向けた取り組みについては「労働災害防止協議会による会合が月1回ある」「1次下請の安全パトロールも頻繁に行われている」との意見があった。小さいけがも報告するよう指導するゼネコンもあり、「『労災隠しは犯罪』という意識が浸透している」との声もあった。

施主や元請の責任について聞いたところ、「地元工務店は安全衛生対策の費用に関して無頓着すぎる」「いまだに『けがは自分持ち』という認識だ」「工期の圧力によって安全性が犠牲になっているケースがある」といった意見が出た。

行政機関などに対しては「国が(安全衛生経費を含めた)契約書のひな型を作って義務化し、守らない事業者を開示したり、処罰してほしい」「安全衛生経費の支払い対応状況に応じて元請をランク付けしてほしい」などの要望が寄せられた。

日刊建設工業新聞の購読申し込みは、こちら

戻る