2020/04/09 新型コロナウイルス/ゼネコン各社、工事対応で協議急ぐ/再開後の職人確保など課題

【建設工業新聞  4月 9日 1面記事掲載】

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた政府による緊急事態宣言の発令から一夜明けた8日、ゼネコン各社が現場の対応方針を相次ぎ固めた。西松建設は同日、宣言の発令を受けて現場の中止に向けて発注者との協議に入ると発表した。鴻池組は発注者と協議の上、工事の続行や中止を判断すると決めた。管理部門などでの在宅勤務を一層強化する動きも出ており、東鉄工業は本社と支社に出勤する社員を2割以下にまで減らす方針を打ち出した。

工事の中止を発注者に申し入れるゼネコンが出てくる一方、「発注者からの要請がない限り工事は継続する」(大手ゼネコン)というスタンスの会社も少なくない。感染拡大防止を目的に工事を中断した場合、追加経費などの請求を認めるかどうかは発注者によって対応が分かれる。

あるゼネコン社員は「感染拡大防止のためには官民問わず工事中止命令を出すことを検討すべきなのだろう」と胸中を明かす一方で、「職人への補償がセットでないと現実的には難しい」と課題が多いことも指摘する。民間発注者から工事の継続を求められるケースもある。「現場の安全を確保したくても、民間の発注者に『こんな状況だが予定通り工事を進めてほしい』といわれている」と現場の実情を明かす社もあった。

工事を中断した場合に浮上する問題として、工事再開後の職人の確保や業績への影響などがある。ある準大手ゼネコンは「一度現場を中断した場合、再開後に職人をまた確保できるか懸念がある」と話す。工事を中止した場合の職人への対応として、清水建設は「再開後も作業に当たってもらえるようフォローする」、佐藤工業は「あらかじめ協力会社と再開時の手配を確認した上で現場を閉所することを想定している」としている。

新型コロナの感染拡大を受け、協力会社が現場の3密(密閉・密集・密接)を警戒し、工事を辞退するケースも出ている。協力会社からの辞退があったという準大手ゼネコンは「ほかの協力会社を確保しているので施工体制に問題は出ていないが、職人の方から現場の環境が怖いという声は聞く」という。

業績への影響は現時点ではほとんどのゼネコンが「工事を中止していないため影響は少ない」と見る。ただ事態が長期化した場合は「民間工事を中心に発注が止まり、当初計画通りの受注高や利益を確保できなくなる恐れがある」と先行きを危惧する声もある。

現場以外の管理部門などは各社が在宅勤務などのテレワークを強化している。三井住友建設はこれまで管理部門の5割を対象に実施していたテレワークを8割に引き上げた。熊谷組は最低限の現場支援機能を残した上で、本店などでは原則として在宅勤務を導入している。

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