2020/06/26 国交省/「一人親方化」問題対処へ議論開始/検討会初会合、20年度内に中間報告

【建設工業新聞  6月 26日 1面記事掲載】

国土交通省は25日、産学官で構成する「建設業の一人親方問題に関する検討会」の初会合を東京都内で開いた。社会保険加入や長時間労働規制などの回避を目的とした社員(技能者)の「一人親方化」に対処するための論点を提示。実態を把握し、規制逃れの一人親方化対策や一人親方の処遇改善策を検討する。年度内に中間報告をまとめ、下請指導ガイドラインの改定に反映させる考えだ。

一人親方は法令上、社会保険の加入義務がない。また事業主となるため働き方改革関連法に基づく年次有給休暇の取得義務や、時間外労働の罰則付き上限規制などが適用されない。このため本来、雇用すべき技能者を一人親方化する「偽装一人親方」が一定数存在。国交省は動向を把握し実効性のある対策を検討する。

検討会の委員は、学識者が蟹澤宏剛芝浦工業大学教授(座長)と水町勇一郎東京大学教授、川田琢之筑波大学教授の3人、建設業団体が元請団体や専門工事業団体、全国建設労働組合総連合(全建総連)など計15団体で構成する。厚生労働省(労働基準局、職業安定局)と国交省(住宅局)がオブザーバー参加し、事務局を国交省(土地・建設産業局)が務める。

国交省の美濃芳郎官房審議官(土地・建設産業局担当)は「偽装一人親方問題を放置すれば技能者の処遇悪化につながるほか、法定福利費を負担しない企業ほど競争上優位となり、公平・健全な競争環境を阻害する要因となる」と指摘。その上で「若い人が安心して入れる透明性の高いクリーンな雇用・請負関係の建設業に変えていくため、実効性ある対策を打ち出したい」と活発な議論を求めた。

主な論点として▽各職種(団体)で偽装一人親方に対する認識▽偽装一人親方(適法な一人親方)の定義付け▽偽装一人親方への対応▽適法な一人親方に対する処遇改善策-を提示。職種ごとに偽装一人親方の認識や現状、取り組みなど実態を把握する。

対応策では、自ら一人親方と認識していない技能者本人にどのように認識させるか、現場での確認作業で建設キャリアアップシステム(CCUS)をどう活用するかを検討。明らかに実態が雇用形態にもかかわらず一人親方として仕事をさせている企業に対する措置や、偽装一人親方本人に対する対応などを議論する。

8~9月に開催予定の次回会合で実態調査の結果を共有し、各団体にヒアリングを行う。11~12月の第3回会合で規制逃れの一人親方対策、一人親方の処遇改善策を議論。2021年2~3月に中間取りまとめを行う。

21年度以降も必要に応じて検討会で議論する。

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