2021/02/24 国交省不動産・建設経済局長・青木由行氏に聞く/労務単価の特別措置で賃金引上再加速
【建設工業新聞 2月 24日 1面記事掲載】
青木由行局長
--下落した単価を据え置く特別措置を講じた背景は。
「2020年の労務単価を調査したところ、2000を超える設定単価の約42%がマイナスになることが分かり、かなりの衝撃を受けた。19年と比較して事業量の減少が原因ではないとされ、先行きの不透明感など新型コロナウイルスの影響が要因に挙がった。異常な年の動向をいつも通りに受け止めた設計労務単価にすれば、マイナスの予定価格につながり、発注という行政の行為が賃金下落のスパイラルを招くことが懸念された」
「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを受け、3次補正と来年度の当初予算で約8・5兆円規模の公共事業関係費が確保され、相当のボリュームの工事を進めることになる。こうした状況下でマイナスの単価になると、かつて言われた『利益なき繁忙』の世界に陥ることも心配された。特別措置はマイナスの影響を避けるためにも合理的なものではあるが、4割超の地域・職種で賃金レベルが下がったのも事実。原因が何であれ、賃金を引き上げ、担い手を確保し、適正な利潤を得るといった持続可能な建設産業としての分岐点に立っている」
--産業の健全化をどう後押しする。
「建設産業に関わるすべての関係者が、最大の危機にあるとの共通認識を深めることが重要だ。元請側には官民の発注問わず、ダンピング受注を慎み、下請側からの見積もりを尊重する。場合によっては賃金の引き上げを指導してもらいたい。行政側も適正な予定価格の設定やダンピング対策などを強化していく。あらゆる施策と行動を総動員し、横の連携を強めながらスクラムを組んで進める」
「ここで負のスパイラルに入ると、建設産業の次代を担う若手が来なくなる。生産年齢人口が減少を続け、担い手確保への危機感が一段と強まっていることは共通認識だろう。生産性の向上などと合わせ、事業が減っても簡単に単価が落ちない環境づくりが持続可能な産業につながる。(労務単価を)たたきやすい、たたかれやすいといった長年染みついた業界内の考えを変えることが求められている」。
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