2021/06/15 日建連意見交換会を振り返る・上/迫る時間外規制、適正工期の設定不可欠

【建設工業新聞  6月 15日 1面記事掲載】

◇取り組み対応、データで提示

日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)と国土交通省の地方整備局など公共発注機関による2021年度「公共工事の諸課題に関する意見交換会」が、15日の九州地区で全日程を終える。新型コロナウイルスの流行に配慮し昨年に続き、全地区ともウェブ開催となった。生産性向上や担い手確保などの観点から、公共工事の制度や現場運営の課題を本音で議論した。約1カ月にわたる意見交換会を振り返る。(編集部・田村彰浩)

意見交換会は、日建連の前身の日本土木工業協会時代から通算で27回目。4月末に宮本体制へ移行してから最初の開催となった。前任の土木本部長である宮本会長の後を継いだ押味至一副会長土木本部長は「良質な社会資本を構築するには受発注者双方の理解と協力が不可欠だ。各地区の意見交換会の役割はとても大きい」と意義を強調する。

日建連は会員企業に円滑な施工の確保や遠隔臨場の実施状況などについて調査を実施。発注機関ごとにデータを整理した。この結果を示しながら議論を進めるスタイルを取った。対応への取り組みが進んでいる点、遅れている点が一目で分かり、発注者に現状を認識してもらう狙いがある。

説明役には茅野正恭公共工事委員長と田中茂義公共契約委員長、佐藤健人公共積算委員長、池田謙太郎インフラ再生委員長の4人の論客をそろえた。進行役は前年に続き、清水琢三副会長土木本部副本部長が務めた。

昨年7月に中央建設業審議会(中建審)で決まった「工期に関する基準」で著しく短い工期での請負契約の締結が禁止された。しかし、日建連の調査では全体の約半数の現場で「工期が短すぎる」という結果が出ている。工期の不足分は土曜日の稼働や平日の残業、プレキャスト(PCa)化や施工パーティー数の増加といった施工者の努力で補っているのが実情だ。

24年4月から建設業に時間外労働の上限規制が適用される。佐藤公共積算委員長は「(工期を守るために)半数以上の現場で社員の時間外労働が(規制の)上限を超えている」と現状を説明。「受発注者双方で(工期に関する)基準を順守するためにも発注者による適切な工期設定が必要だ」と訴えた。特に、工期不足が著しい結果とされた鉄道建設・運輸施設整備支援機構の担当者は「整備新幹線事業は完成・開業時期が定められてスタートしている。非常に厳しい中でも適正な工期を設定しているつもりだった」と弁解した。

適正工期を巡り、受発注者間の認識に相違がある。工期を設定した前提となる条件の明示や工程の共同管理の必要性が改めて浮き彫りとなった。清水副本部長は「違法な長時間労働が発生すれば、著しく短い工期の一つの判断材料となる」とし、発注者に理解と取り組み強化を求めた。

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