2021/07/08 近畿整備局/紀伊半島大水害復旧工事/砂防で自動化施工、鹿島が技術提案

【建設工業新聞  7月 8日 8面記事掲載】

2011年の紀伊半島大水害の復旧工事で自動化施工が導入されている。現場の施工条件をプログラムに入力し、生成された作業手順に従って建設機械が自動で作業を行うもので、設計段階から施工者が関与する技術提案・交渉方式(ECI方式)を「赤谷3号砂防えん堤工事」(奈良県五條市大塔町)で採用し、鹿島が出水期の施工法として提案した。災害復旧と砂防ダム事業では全国初の自動化施工という。近畿地方整備局紀伊山系砂防事務所が6日、報道関係者に現場を公開した。

紀伊半島大水害では奈良県や和歌山県など紀伊半島の各地で大規模な土砂災害が発生し、人命や建物が甚大な被害を受けた。現在も斜面対策や砂防工事など復旧作業は続いているが、砂防えん堤を整備する赤谷地区では大雨のたびに数十万立方メートルの大規模崩壊を繰り返すなど危険な状況で工事が行われている。特に赤谷3号砂防えん堤は大規模な崩壊が発生した斜面直下での工事となり、作業員の安全を確保するため、遠隔操作による無人化施工を実施してきた。

ただ、6月15日から出水期間に入り、現場は立ち入り禁止区域に設定されていることから、工期の短縮や施工の効率化などを目的に無人化施工に加え、同月23日から自動化施工を開始した。

自動化施工は無人化と異なり、作業員は監視業務のみとなり、省人化にもつながる。同工事では砂防えん堤のコンクリートブロック設置、ブロック背後のソイルセメントの敷きならし、転圧の三つの工程を自動化している。操作室では無人化施工で4人、自動化施工で2人のオペレーターがモニター画面を見ながら建設機械の操作や監視に当たっている。

バックホウにはブロックを持ち上げる特殊装置やAR(拡張現実)カメラ、建機を操作するロボット、傾斜計などを備え、ARカメラがダンプに積んだブロックのARマーカーを読み取ることで3D座標を確認し、自動でブロックを設置する。ソイルセメントの敷きならし用のブルドーザーと転圧用の振動ローラーも導入し、長さ125メートル、堤高14・5メートルのえん堤を整備する。

無人化施工はコンクリートブロックとソイルセメントの運搬、ブロック近くの敷きならしと転圧作業で実施し、自動化と無人化を組み合わせることで作業の効率化や施工品質の向上を図っている。10月末までの出水期は自動化と無人化で施工する。

鹿島の江口健治赤谷工事事務所長は「計画通り順調に作業が進んでいる。安全性にも優れ、省人化・省力化につながっている」と述べ、紀伊山系砂防事務所の田村友秀副所長は「自動化によって人が立ち入らなくても効率よく安全に作業ができ、災害復旧現場では有効な技術だ。早期に復旧工事をやり遂げ、住民の安心を確保したい」と話している。

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