2021/07/12 全国自治体で土砂災害危険箇所の緊急点検開始/所有者、盛り土関係者への対応視野

【建設工業新聞  7月 9日 4面記事掲載】

静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流災害を受け、全国の自治体で危険性のある区域や盛り土を緊急点検する動きが広がっている。山梨県の長崎幸太郎知事と茨城県の大井川和彦知事は8日、定例会見で県内の盛り土造成地などを緊急点検する考えを表明した。結果を踏まえ、土地所有者や盛り土関係者に注意喚起などを措置する予定の長野県のように、既に対応に乗り出した自治体は複数ある。

兵庫や鳥取、和歌山、広島、山形、熊本の各県なども対応に乗り出している。茨城県は1437カ所の土砂災害特別警戒区域のうち、人家周りの459カ所が対象。「把握していない不法投棄や地形の改変も調べ、必要に応じて立ち入り調査する」(大井川知事)という。山梨県は森林法の林地開発行為から設置された太陽光発電施設などを含めた66カ所が対象。長崎知事は「人ごとではない」と危機感を示した。8日は青森県が県内の地形改変の実態を調査すると発表、熊本県も1012カ所の点検を8月末までに完了させる見通しと発表した。

調査開始の方針を明らかにした自治体を見ると、長野県は7日に緊急点検を開始した。土砂災害警戒区域が6700カ所あり、同区域やその上流の大規模な盛り土造成地で、盛り土のクラック、湧水の状況、側溝・水路の破損状況などを市町村の担当者と連携して調べる。県はリニア中央新幹線を建設中のJR東海に盛り土計画の安全対策を再確認するよう依頼した。

「六甲山麓を中心に(風化花こう岩の)地質的にもろい所がかなりある」と指摘する井戸敏三兵庫県知事のように強い警戒感が広がっている。赤羽一嘉国土交通相は6日の閣議後の会見で盛り土を総点検する意向を示しており、同様の対応が続きそうだ。

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