2021/07/27 建設発生土-適正処理求める動き/熱海土石流受け、国交省は追跡システム試行

【建設工業新聞  7月 27日 1面記事掲載】

静岡県熱海市で3日に発生した大規模な土石流災害をきっかけに、建設発生土の適正処理を模索する動きが出てきた。土石流の被害拡大の要因とされる盛り土で建設発生土の不適切な処理が疑われていることを受け、全国知事会(会長・飯泉嘉門徳島県知事)は早期の法制化による全国統一の基準・規制整備を国に提案。国土交通省は不適切処理の抑止策になる可能性も念頭に建設発生土のトレーサビリティー(追跡可能性)システムを導入する方針。現在は試行段階にある。

建設発生土は廃棄物処理法に基づく産業廃棄物に該当しない。運搬過程でマニフェスト(産業廃棄物管理票)が運用されておらず、現場から搬出後の流通経路や活用方法を正確に把握するのは難しい。全国知事会は19日にまとめた国への緊急要望で、建設発生土の規制条例が一部自治体で制定されているものの、「罰則に上限規定が設けられていることなどにより適正処理の徹底に限界がある」と課題を指摘。早急な法制化が必要と強調した。

棚橋泰文防災担当相へ20日に緊急要望書を手渡した同会危機管理・防災特別委員会の黒岩祐治委員長(神奈川県知事)によると、棚橋担当相は「(各省と)連携し、統一の基準・規制も視野に入れながら検討していきたい」と応じたという。

国交省は昨年9月に策定した「建設リサイクル推進計画2020~『質』を重視するリサイクルへ~」の中で、新規施策としてトレーサビリティーシステムの活用を打ち出した。建設発生土の全体量約2億9000万立方メートルのうち、有効利用されず残土処分場など受け入れ地に搬出されている約6000立方メートルの一部が不適切に処理されている可能性が高いと見ている。発生元から搬出先までの移動実態を把握する仕組みを構築する。昨年度から各地方整備局発注工事の複数件を対象に、ICカードで運搬情報を管理するトレーサビリティーシステムを試行している。

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