2021/08/19 コンクリダム、86%で工事中に温度ひび割れ発生/特記仕様書に協議事項明記を/協会

【建設工業新聞  8月 19日 1面記事掲載】

2003年以降に竣工したコンクリートダムの86%で建設工事中に温度ひび割れが発生し、対応に施工者が苦慮している実態が日本ダム協会(押味至一会長)の調査で分かった。技術的にもひび割れを完全に予防するのは難しく、補修工事の多くのケースで経費を施工者が負担していることも明らかになった。同協会は調査結果を受け、着工前に受発注者間でひび割れの対応を決めておく必要があると訴えている。

調査は03年以降に国土交通省や農林水産省、水資源機構、都道府県、電力会社などが建設した112のコンクリートダムを対象に、温度ひび割れのアンケートを実施。72%の81カ所のダムから有効回答を得た。

86%に当たる70ダムでいずれかの部位で温度ひび割れが発生していたことが判明。設計図書に基づく仕様に対応し、ひび割れの防止や抑制を図る独自の技術提案を実施したダムでも発生した事例が見られた。そのため、完全にひび割れを予防することが非常に難しいとの認識を強めている。

調査では温度ひび割れが発生したダムの補修状況も確認。部位別ベースで見ると、ひび割れが発生した計287カ所のうち約9割で補修工事が行われ、そのうち約8割で経費を施工者が負担している実態も明らかになった。

ダム協会は調査結果を受け、設計図書の共通仕様書で事前に想定していないひび割れの対応に関する直接的な記載がないことを改めて指摘した。特記仕様書でもそうした記載が少ないとして、受発注者間で補修工事が発生する度に協議している現在の対応方法の改善を提唱。設計変更によって適切な補修費が計上されるよう、ひび割れの対応を協議事項として特記仕様書に記載することが望ましいとの考え方を示した。

温度ひび割れを防止する新たな技術やシステムとして、CIMや人工知能(AI)を活用したマネジメントシステムも有効になると見ている。

調査はダム協会の施工技術研究会第2部会が中心となり実施。「コンクリートダムの温度ひび割れの現状と対応」として報告書をまとめている。

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