2021/10/01 内閣府/「危険な盛り土」対策検討/法令見直し規制の空白解消、建設発生土適正処理も

【建設工業新聞  10月 1日 1面記事掲載】

内閣府は7月に静岡県熱海市で発生した大規模な土石流被害を踏まえ、盛り土が原因の土砂災害を対象に防止対策をまとめる。都道府県が実施している総点検の結果を踏まえ、崩落リスクが高いなど「危険な盛り土」で、迅速に安全を確保するための方策を具体化する。現行法令を見直し開発規制の空白を解消。廃棄物混じりの土砂も含め建設発生土の適正処理の在り方も探る。12月ごろに対策をまとめる考えだ。

「盛土による災害の防止に関する検討会」(座長=中井検裕東京工業大学環境・社会理工学院教授)の初会合を9月30日に東京都内で開いた。盛り土の撤去や土留め工事など既存の危険箇所への対応、土地利用規制など危険な盛り土を未然に防ぐ対策の2本柱で検討していく。

政府は宅地造成等規制法や森林法などで、盛り土を含めた一定規模以上の開発行為を規制している。熱海市で土石流災害を引き起こしたとされる盛り土箇所も法規制の対象区域内だった。ただ、事業規模や目的が適用基準に当てはまらなかったため規制を逃れた。

全国で26都道府県が独自の開発規制条例を制定しているが、基準や規制内容はばらつきがある。首長からは盛り土や土砂搬入で統一基準を含めた法整備を訴える声もある。

法令や条例の網をかいくぐる危険な盛り土を防止するため、内閣府は現行基準を見直し規制の実効性向上を目指す。建設発生土を巡っては、安全に再利用していく方法や廃棄物混じりの土砂を適切に処理するための手法、廃棄物の混入防止策を検討。法令違反など悪質なケースに対処するため、行政体制の強化も模索する。

政府の要請に基づき、都道府県は盛り土の状況を総点検している。国土交通省によると、点検予定箇所は3万~4万カ所(都道府県当たり平均約740カ所)に達する。目視点検で届け出内容と現地の相違、災害防止措置対策の実施状況などを確認。政府が情報を集約し、年内に暫定の点検結果をまとめる予定だ。

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