2021/10/12 橋梁メーカー各社/鋼材価格高騰で対応に奔走/設計変更を要請、生産効率向上も

【建設工業新聞  10月 12日 1面記事掲載】

橋梁メーカー各社が上昇基調にある鋼材価格の対応に奔走している。急激な値上げを予想し鋼材メーカーに理解を求めながら、価格上昇分を請負金額に反映してもらうよう、発注者に設計変更などを要望。生産効率を高めて鋼材の歩留まり率を改善したり、使用する鋼材の種類を減らしたりしてコスト抑制に対応している。経営資源やノウハウを生かし、利益の確実な確保につなげようとしている。

鋼材価格は鉄くずや鉄鉱石といった原料、加工と輸送コストなどが値上がりに影響する。価格は今年1月ごろから上昇傾向にあるという。業界関係者は、新型コロナウイルスの影響で低調だった景気が欧米などで回復基調にあり、鉄鋼需要も増加したと分析。脱炭素社会の実現を見据え、加工を行う高炉の操業停止が価格上昇に追い打ちを掛けているようだ。

建設物価調査会が9月に公表した「主要資材動向(東京)」によると、H形鋼は1トン当たり10万2000円と試算。2008年以来の高水準に達した。5カ月連続で上昇している中、調査会は「鋼材メーカー各社が価格優先の販売姿勢を崩していない。流通筋も採算確保に向けて値上げ交渉を継続する」と先を読む。

鋼材価格の高騰を受け、橋梁メーカー各社は業績への影響を最小限に抑える取り組みに腐心している。IHIは「鋼材値上げ交渉に応じてもらう」よう発注機関に要請。鋼材メーカーにも価格上昇を可能な限り抑えるよう訴える構え。

物価スライド方式を採用しているJFEエンジニアリングも「鋼材価格の見通しを加味した積算」を行いつつ、「発注者に設計変更を依頼」するという。横河ブリッジは「急激な値上げに対応できないため、段階的な値上げを要請中」とコメント。鋼材メーカーの対応を注視している。

発注機関への協力要請と並行して自社の経営努力も怠らない。各社が前工程の段階で必要分だけ資材を調達する「ジャスト・イン・タイム」の発注を継続し、コスト削減に努める。IHIやJFEエンジは、同種鋼材の使用や鋼板数を減らして価格上昇に伴う影響を最小限に抑える方針だ。

鋼材価格の引き上げを受け、日本橋梁建設協会(橋建協、高田和彦会長)は日本鉄鋼連盟(橋本英二会長)から情報を収集。意見交換を通じて「対応方針を固める」考えを表明している。

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