2021/12/01 1都8県建設業協会、関東整備局と意見交換/労務単価の下落懸念/事業量確保必要

【建設工業新聞  12月 1日 5面記事掲載】

1都8県の建設業協会と関東地方整備局の2021年度意見交換会が11月29日に全日程を終えた。コロナ禍の影響を重く見て、インフラの整備・維持管理や災害対応を担う「地域の守り手」として、地域建設会社が存続するための環境整備を求める意見が相次いだ。公共工事設計労務単価を下落させない制度設計や、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の運用徹底で公共発注機関に対応を求めた。技術者不足の指摘もあった。各地の会合を振り返った。

21年は新型コロナウイルスの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出された期間が232日間となった。経済活動の萎縮は「これから建設業に影響が出る」(青柳剛群馬県建設業協会会長)と懸念する協会首脳は少なくない。人員と重機を維持し、地域の守り手として活動するために、事業量の安定確保を求める意見が例年以上に多かった。山梨県建設業協会の浅野正一会長は公共事業費を十分に確保し、自治体とともに防災対策をさらに強化するよう提案した。

「現有人員をいかに活用するかが重要だ」。埼玉県建設業協会の伊田登喜三郎会長は事業量を確保した上で、担い手の処遇改善や働き方改革を進めることの必要性を強調し、現場の制約を考慮した労務単価の設定や最低制限価格制度の見直しなどを要請した。神奈川県建設業協会(松尾文明会長)は、4週8休を実現した工事の労務費の補正率アップを強く求めた。労務単価を巡っては、群馬建協の青柳会長が「(経済活動の萎縮で)対策を取らないと単価が下がってしまう」と危機感を示し、単価を据え置く特別措置を22年に設定する単価にも適用するよう申し入れた。

「徹底した指導をお願いしたい」。栃木県建設業協会の谷黒克守会長は公共工事品確法の運用に危機感を示した。「技術職が減っている」と指摘し、特に自治体の工事で適正価格の受発注が難しくなっている現状を説明した。同法の運用は各地で議題に挙がり、茨城県建設業協会(石津健光会長は)は詳細設計の精度向上や既製杭工の価格の是正を求めた。千葉県建設業協会(高橋順一会長)や長野県建設業協会(木下修会長)はそれぞれ、複数の自治体の工事を監理技術者が兼任できるような技術者要件の緩和、若手技術者の表彰制度創設を要望した。

建設キャリアアップシステム(CCUS)に関する要望も多かった。茨城建協などが費用負担の支援を要請。東京建設業協会(今井雅則会長)は、普及に向けたモデル工事の拡大に加えて、施工管理を効率化できるメリットのアピールが必要と指摘した。

21年度の会合は、歩切りやダンピングを含めた価格の在り方について、自治体のトップへの働き掛けや現地確認を含む設計精度の向上に改めて力を入れる趣旨の回答が整備局や県の担当者からあった。最低制限価格の一般管理費算定率の引き上げをはじめ、本省に伝わることになった意見は多く、労務単価の行方とともに今後の政策判断が注目される。

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