2022/01/17 水道用鋳鉄管の不正塗料問題/工事一斉停止の異常事態に/工期遅れやコスト増懸念

【建設工業新聞  1月 17日 1面記事掲載】

水道用ダクタイル鋳鉄管の一部に不適切な防腐用塗料が使われていた問題を受け、全国で水道管工事が一斉停止する異常事態となっている。鋳鉄管の主要メーカーはダクタイル鉄管関連製品の出荷を一時停止。安全性が確認されるまで出荷や工事を再開できないため、長期化すれば工期の大幅な遅れや施工者に生じるコストの増加が懸念される。年度末に工期を控える工事が多く、早期の解決が急務となる。

日本水道協会(会長・小池百合子東京都知事)によると、神東塗料(兵庫県尼崎市、高沢聡社長)が製造したダクタイル鋳鉄管の防腐用塗料について、同協会の規格認証取得時に不正があったことが判明。クボタや栗本鉄工所などメーカー各社は、神東塗料が製造した塗料を使ったダクタイル鉄管関連製品の出荷を一時停止している。

水道管工事を発注している全国の地方自治体も一斉に工事を停止した。国内最大の水道事業者、東京都水道局は「水道管は基本的にダクタイル管を使っている。安全性が確認されるまで都内でダクタイル管を使った水道管工事は中止している」(担当者)。13日時点で中止した工事の件数や工期に与える影響は不明という。

日本ダクタイル鉄管協会(久保俊裕会長)によると、全国に流通しているダクタイル鉄管のうち神東塗料の塗料を使った製品のシェアは「正確には分からないがかなりの量を占めていると思う」(事務局)。安全性の確認による出荷や工事の再開まで長期化するとの見方も示す。

別の工事関係者は工期の大幅な遅れや施工者のコスト増加を懸念。こうした事態を招かないよう、日本水道協会による速やかかつ柔軟な対応を期待する。

ダクタイル鉄管は下水管でも一部使われるケースがある。東京都下水道局は下水管工事でも不正塗料を使ったダクタイル鉄管工事の一時中止を14日付で決めた。国土交通省は「近年の下水道事業はほぼ塩化ビニール管を使用している。事業への影響はほとんどないだろう」(水管理・国土保全局下水道部)と指摘している。

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