2022/01/25 賃上げ企業加点措置/主要ゼネコン、情報不足で対応に苦慮/本社アンケート

【建設工業新聞  1月 25日 1面記事掲載】

賃上げを実施する企業を公共調達の総合評価方式で加点評価する措置について、日刊建設工業新聞社が主要ゼネコンを対象にアンケートを実施したところ、多くの企業で対応を決めかねていることが分かった。加点を目的に「賃上げを予定している」と回答した企業もある一方、多くの企業は対応について「検討中」や「未定」と回答。運用に関する情報が不足していることなどを背景に、対応に苦慮している様子がうかがわれた。

アンケートは14~24日に主要ゼネコン33社を対象に実施し、24日正午時点で29社が回答した。加点措置に必要な「従業員への賃上げ計画の表明書」について、「提出する」は1社、「対応を検討中」は23社、「未定」は5社。「表明書は提出しない」は0社だった。賃上げを表明する予定の1社はその理由について「社員に対する働き方改革推進のインセンティブとして導入する」と説明した。

「対応を検討中」の理由では「制度に関する詳細情報を収集中」「企業業績を踏まえて慎重に対応する」などが挙げられた。

加点評価を受けるには、大企業は1人当たりの平均受給額を前年度比3%以上、中小企業なら給与総額を1・5%以上増やす目標を設定する必要がある。賃上げを表明した場合、例えば40点満点の場合は3点加点となるが、賃上げが未達だと4点減点となる。

ただ、引き上げる受給額の定義については不明確な部分もある。「対応を検討中」と回答した企業からは「賃上げの達成評価基準は、各種手当を含めた総支給額ベース。帰省旅費などは実費精算的な意味合いが強く、企業による努力の要素は低い」「賃上げ実績確認の対象となる人員にアルバイトや派遣社員が含まれるのか、不明確」と指摘する声もあった。

「未定」の理由には「内容について調査中のため」「加点・減点措置の影響、評価方法を含めた賃上げ実施の可否について、十分な検討が必要なため」といった回答が目立った。

今回の制度への受け止めについては「岸田政権が掲げる成長と分配の具現化に向けた並々ならぬ決意の表れ」と前向きに捉える企業もある一方、「賃上げによるコスト増に見合う収益が得られるかどうかの評価・判断が難しい」など戸惑いの声も多く寄せられた。

春闘を控える中、あるゼネコンは「(賃上げした場合)これまでの労働組合との賃金交渉による賃上げ率や、支給原資を大幅に上回ることになる」と慎重な姿勢を見せる。労働組合の関係者は「賃上げについては企業の業績による部分もある。今後の動きをみて対応を考えていく」と話す。

賃上げを行う企業の優遇は、岸田文雄首相を議長とする「新しい資本主義実現会議」が昨年11月にまとめた緊急提言に盛り込まれた。緊急提言を受け、国土交通省は4月1日以降の工事を含む全ての発注案件で加点措置を導入する。

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