2022/02/02 賃上げ企業加点措置-表明書「提出」は4社/主要84者に本社調査/対応に温度差

【建設工業新聞  2月 2日 1面記事掲載】

総合評価方式の入札契約手続きで賃上げ企業を加点評価する国の施策で、ゼネコンなど建設関連各社が対応に苦慮している。日刊建設工業新聞社が主要84社にアンケートを実施したところ、賃上げ計画の表明書を「提出する」との回答は4社にとどまった。表明企業は加点措置を通じて社員の待遇向上や受注機会の拡大を狙う。賃金アップは経営の根幹に関わる重要事項で、短期間の方針決定は難しい。固定費の増加を補う収益をどう確保するのか。経営戦略の練り直しを迫られている企業は少なくない。=3面に調査結果の集計表

アンケートは1月18日~2月1日に実施した。ゼネコンや建設関連各社に賃上げへの対応を聞いたところ、「対応を検討中」の54社が最も多かった。次いで26社が「未定」と答えた。「表明書を提出しない」という回答はゼロだった。

表明書を提出すると答えた企業は、受注業務に占める総合評価方式の割合が高い建設コンサルタントや道路舗装会社など。いずれも社員の待遇向上や加点による受注機会の拡大を狙い、賃上げ実施の方針を固めている。検討中と回答した企業は入札契約手続きで「加点されないリスク」が生まれ、ターゲットにしている案件が受注できない可能性があるとした。

ただ受注機会が拡大するメリットがある一方、賃金アップは固定費の増加につながる。加点措置に賛同しつつも、受注量を維持するため「対応せざるを得ない」と苦しい胸の内を明かす企業もあった。

プロポーザル方式で多くの案件を受注している建築設計会社は、総合評価方式の応札案件が少ないことを理由に「関心は高くない」との声もあった。官庁案件の受注比率が低い設備工事会社は「赤字受注だった場合に経営を圧迫するのでは」と先行きを懸念する。

国土交通省は加点措置に関連した説明会などを各地で開催し周知徹底に努めている。制度内容を十分に理解できていない企業も複数あった。「措置の詳細に不明点が多い」と回答した企業は、「技術者単価の賃上げ率や最低制限価格の見直しなど国の施策動向が示されていない」と指摘する。

新年度が間近に迫り、来期の経営計画を固める時期を迎えている。加点措置への対応は今後の受注や利益確保を左右しかねず、各社の動向が注目される。

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